今年も桜が降っている。
青い制服をはためかせながら、浅羽悠太は空を仰ぐ。はらはら、はらはらと舞い散る花びらを顔で受けて、その愛しさに目を細めた。
「ゆーたぁ〜
なにしてんのー」
双子の弟である祐希は、その兄のうしろ姿をしばらく眺めていたけれど、
このままじゃ永遠に桜に打たれ続けるような気がしたので、とうとうしびれをきらして声をかけた。
「はなみだよ」
実に簡潔な答え。
祐希は呆れて地面を蹴った。何だかペースを乱されておもしろくない。いつも自分が悠太を振り回してるのに。悠太を翻弄するのが好きなのに。ミイラ取りがミイラになる?あれ、ちょっと違うかも。
「ねえ、悠太ってば。もう行こーよ」
今度は小石を蹴ってみた。それでも悠太は見向きもしなくて。花吹雪はいっそう濃くなり、その姿を隠してしまう。
「ゆーた!」
咄嗟にかけよって抱きしめた。
きっと祐希はひどい顔をしていたのだろう。
垣間見えたのは、愛おしむような笑顔だった。
愛降らし
______
ゆーた呼びが好きです。