「今日のお昼、何パスタがいいー?」

台所から母親が叫ぶのが聞こえて、悠太はシャーペンを動かす手を止める。というかパスタは決定なんですね。揺るがないパスタ。最近母親はスパゲティーと呼ばなくなった。

「んー…
ミートソース」

「ちょっと待とうか祐希くん」


余談だけど、うちのミートソーススパゲティにはいつも贅沢になすが使用される。



案の定大量に盛られたなすを見て、祐希は多いに顔をしかめた。
何故頼んだ。
フォークとスプーンを器用に扱う様子は素直に賞賛したいけど、なすだけ隣の皿へ移動させるのはやめてほしいな。

「悠太ほら口あけて」
「おかしい」
「おかしくなんかないよ、俺達は正しいよ」
「ちょっと待って、達?俺たちって何なの」
「え…。俺達…の関係?あ、悠太はもう兄弟なんかじゃいられな」
「おかしい」

埒があかない。悠太は空気を吐いてこめかみを押さえる。

「何が目的なの、動機は?」
「ゆうたこれかつ丼じゃないよ、ナポレオンだよ」
「ナポリタンね。あとこれはミートソース」
「食べさせて」

いつになく真剣な表情の祐希をまじまじと見てしまった。


「…そしたらちゃんと、なす食べる?」

「うん。今度セロリが出たら悠太が食べるの手伝ってあげるから、手取り足取り」

「おかしい」



君が好きならそりゃしょうがない


(君が嫌いなものは)
(俺が食べさせてあげる)
(そしたら君も)
(好きになるでしょう?)



―――――
自惚れが自惚れになってない
祐悠がすき



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