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進路は、早めに決めておかなくちゃいけない、らしい。
帰りのホームルームで先生が言っていた。
俺は前に座る要の背中についた糸くずをつまみながらそれを聞いていたので、細かいことまでは覚えてない。
そんなの、いきなり言われてもわかんないし。
なんて、言い訳でしかないことは百も承知、気まぐれに本屋に入ってみれば赤本のどぎつい色が俺の視界に飛びこんでくる。
その脇に文庫サイズの本がひっそりと積まれていた。
《大学図鑑》
「これは…要さんの持ってたやつですね」
手にとってぱらりぱらりとページをめくる。このどこかにきっと要はもうポストイットを貼ったはず。
そういや要、模試の出来はどうだったんだろうか。
俺は良くも悪くも…といったところだった(当社比で)。祐希にも一応どうだった?と聞いてみたら爽やか(当社比)に話題を変えられた。まあ祐希だから、決して難しくはなかったんじゃないかな。
春と千鶴は…うん。そんなところ(当社比)でしょう。
大学。
いまの俺には、果てしなく遠く感じる。
「ばらばらに、なるのかな」
せめて―
…本が手から落ちた。
ばさばさ、と音がして、きちりと積みあがっていた本の塔が崩れた。
というのは俺が愕然としたからで、
なぜならば貪欲というものを初めて(当社比)実感したからで、
それは、非常に浅羽お兄ちゃんらしくない感情だった。
―せめて、
要と同じ大学に行きたい―なんて。
octadeca
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18。