1/29あきら誕


「こーちゃんから会いたいなんて珍しいね」

待ち合わせ場所の時計台に、きっちり5分遅れてあきらがやってきた。手ぶらにラフな格好。対するこちらは職場帰りのためスーツ姿だ。

「…あきら」

俺はすうっと息を吸う。さん、にー、いち。

「た、たんじょ
「ボク、晩御飯グラタンがいいな〜」


見事にカブった。


「…へ」
「だから、グラタン作ってよ!ホタテ入ってるやつ〜。
今日は久しぶりにこーちゃんの手料理食べたい気分なの」

あきらはそう言って、にっこり笑ってみせた。

…こいつ。

「…疲れてるからあんまりこったの作れないよ」

「とか言っちゃって頑張るくせに」

「ばっ、」

図星だった。顔がいっきに火照るのがわかる。これは恥ずかしい。俺はいたたまれなくなってマフラーに顔を埋めた。無意識に自宅へと足どりを速める。
するとあきらはぐいっと目の前に回り込んできた。驚く俺に、

「でもそんな優しいとこ
好きだよ」


爆弾を投下した。




祝ってるよ

(あはっ、こーちゃん真っ赤じゃん。かーわいい)

(うっうるさい!)



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