守りたい、だなんて。
ぽつりと頭に浮かんだそのことばの意味を理解するまでに、春は実に10分を要した。

「でさ、祐希が
…どしたの?春」
「へっ…いや、すみません
ちょっとボーッとしてました」
「ん、はるだもんね」

脈絡のないことを呟いて、春の正面に座る悠太は、口のはしを穏やかに上げた。優しい表情。
でもそれは、なんだか酷くおぼつかなく見えて、春は漢文で習った、水面にうつる帆掛け船の幻影を連想する。

「駄目ですよ」
気づけば口が勝手に動いていた。
「え?」

悠太がこてんと首を傾げて春を見つめる。可愛らしい、所作。愛しい、と思った。


「僕が、いますから。
僕が、悠太くんを守ります」


だから、いなくなったりさせませんから。


最後の文句は独り言のようだったけれど、それでも教室の空気に吸い込まれることなくはっきりと耳に残った。

唇をしっかり結んで、春は悠太と視線を合わせた。突然の告白に、悠太の瞳がわずかに揺らぐ。でもそれはほんの2、3秒のことであった。すぐに悠太はもとの淡い表情に戻って、

「ありがと、春。というか…どっちかっていうと俺が面倒見る方じゃないのかな」

ああ、違うのに、そういうことじゃない。そう思うのに、うまく声に出せなくて、春は結果曖昧にはは…と笑うしかなかった。

やめてよそんな俺を揺さぶるようなこと言うの、

悠太は相変わらず、痛みを秘めた穏やかな笑みでその姿を見守っていた。



そんな新学期



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