ファッションモンスター

*突発パロ




全く、冗談じゃない。
すっかりぬるくなった元アイスのカフェオレを流し込み、喉越しの悪さに舌打ちする。その際に安物の眼鏡が鼻筋を滑り落ちた。ツイてないという抽象的事実はとことんつきまとい、離さんとばかりに首を絞めてくる。案の定、手の平の携帯がけたたましいバイブ音を鳴らした。あいつからだと思うと額に青筋が浮かぶ。それでも立ち上がる俺はなんて立派なアシスタントか。長時間ねばったファーストフードショップの丸椅子は、合成皮革が体温を甘受して嫌な温かみを帯びていた。


最近異動になった部署の上司の第一印象はまさに、最悪。
まず同年代であること。174p(俺よりほんの僅か高い)、高身長とは言い難いが、無駄な肉は一切無い。細身かつ痩身で、筋肉もささやかながらついている。生まれつきとおぼしき栗色の髪は、乳白色のどぎついライトの下でも申し分ない輝きを放つ。月明かりの下なら、もっと秀麗に映えるだろう。
聡明さが滲み出る顔の、上品な厚い唇からは、ギャップに富んだ、耳を疑うほど奔放な「指令」が飛び出す。

初対面で俺の全身をじろじろと見、奴は
「スタイルと顔だけなら、まあ悪くないんじゃない?」
長いまつげの一本も動かさずそう言った。何故容姿について指摘されねばならないのか。褒められているらしいので何も反論できない。後になって、それがファッションチェックだったと知り、てんで駄目だとけなされていたことに気づいた。

そう、休日は常にジャージ、愛用の黒ダウン以外の冬物アウターを持たない俺が異動になったのは、ファッション誌の編集部だったのである。




色々と間違えてます すみません
プ〇ダを着た〇魔みたいなのが…書きたかった…!


(2012/09/30)
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