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時が経つのは早いもので、今日は日曜日。つまりはムースと玲子のデート当日である。
「じゃあ行ってくるだ。」
「ほほ。まあ楽しんで来るがいい。」
ムースはいかにも罪悪感を抱えたかのような、それはもう複雑な表情で猫飯店を後にし、コロンはそれを愉しげな表情で見送る。
しかしシャンプーは憮然とした表情で二人を見ていた。
ムースが出ていき、姿が見えなくなったところでやっと、シャンプーは口を開いた。
「曾おばあちゃん、何でムースのデート許したね。今日は日曜日。客足も伸びて忙しくなるある。」
シャンプーの口調は誰がどう聞いても不満げだった。コロンは何度か瞬きをして不満を露にした曾孫を見つめる。
そして意地悪そうに笑った。
「お前一人では出来ないのか?」
「そういうわけじゃないね。でも…」
「ほほ。お前はムースが来るまで一人でこなせていたはずじゃぞ。」
その言葉にシャンプーは閉口する。
確かに自分一人でもこなせないことはない。
忙しくなるから…なんてことは口実だ。言い訳なのだ。
自分がイライラしている理由もなんとなく分かっている。
使いっぱしりがいないことよりも、あのド近眼で木偶の坊なあいつ自身がいないことが嫌なのだ。
しかも彼は他の女とデートに出かけるという。
何なのだ。一体何なのだ。
あいつは私のことが好きなのでは無かったのか。
私に対する気持ちなど、他の女に言い寄られてしまえば薄れてしまう程度のものだったのか。
ショックだった。
というより、ムースのことで自分がショックを受けたこと自体がショックだった。
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