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今度の日曜ムースがあの女とデートに行くらしい。ということは、先日の会話でわかったことである。
ムースはそのせいで最近呆けたような態度を取るようになった。と、シャンプーは感じている。
きっと自分がこんなにもムカムカするのは、彼が色ボケが原因でてきぱきと仕事をしていないからだ、とシャンプーは自分に言い聞かせていた。
ムースが自分以外の誰を好きになろうと知ったこっちゃない。
だって私は乱馬の事が好きなのだ。
好きに違いないのである。
そう思いながらもシャンプーは、テーブルを拭きながら小さな溜め息を漏らした。
そんな曾孫の様子を楽しそうに眺めているのはコロンである。
ほう、まさかこのように転ぶとはの。と聞こえてきそうな表情だ。
長く生きてきたコロンもそれなりに恋愛を重ね、そちらの経験も豊富に違いない。
だからこそシャンプーの今考えている事等も手に取るように分かるのだろう。
そして、この騒動によってそれぞれの関係がどのように揺れ動き、変わっていくのかも。
◆◆◆
「おいあかね。良かったのか、あんな風に簡単に言って。」
「なんのことよ。」
「ムースのデートの件だよ。色々ヤバイんじゃねぇの。」
乱馬は怪訝な顔をしてあかねを見た。
「何がヤバイのよ。もしムースがその玲子ちゃんを好きになれば万々歳じゃない。」
「でもよ…」
「分かってるわよ。」
あかねは柔らかく微笑む。乱馬の言わんとすることは分かっている。
「大丈夫よ。これはムースの問題なんかじゃないわ。シャンプーにとっての試練なんだから。」
「つまりどういう事だよ。」
鈍いわね、とあかねは小さく溢す。
「私がもし他の男の子とデートに出かけるって言ったら、付き合う前の乱馬だったらどうしてたかしらねって話よ。」
「?」
「行けばいいよって言ってたはずよ。でも実際は…」
「…成る程ね。」
今はそんなことないけどね、と二人は笑いあう。
「今あかねがそんなこと言い出したら、俺は最初から全力で阻止するけどな。」
「…ばか。」
夕暮れ時の猫飯店からの帰り道、二人の影はゆっくりと重なった。
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