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自分を好きだと、何時も見ていたと告げ、無理矢理約束を取り付けて去っていった女性は、名を玲子と言っていた。
何故自分は玲子の誘いを咄嗟に断れなかったのか。
それは彼女がシャンプーに似ていたからだ。
顔立ちが酷似していたという訳ではない。
ただ…醸し出す雰囲気というのだろうか、それが何処と無く似ていたのだ。
しかしまあ、なんと自分は浅はかな事をしてしまったのか。
これではシャンプーに益々愛想をつかれてしまうではないか。
だが、玲子に告白されて胸が高鳴った事実も否定することは出来なかったのだ。
「オラはどうしたら良かったんじゃ…」
無論、答えは神のみぞ知る。
◆◆◆
「へえー、そんなことがねぇ。」
「とんだ物好きもいたもんだぜ。」
経緯を聞いたあかねは意味ありげにニヤニヤと笑い、一方の乱馬は無遠慮にゲラゲラと笑った。
「全く失敬な奴らじゃ。オラはこんなにも悩んでおるというのに。」
「あら。これでも相談にのってるつもりよ。」
心外だと言わんばかりに頬を膨らますあかねと、そうだそうだと適当に便乗する乱馬。
「まあよい。しかし、オラはどうしたら良いのじゃ。」
「簡単じゃない。その玲子ちゃんって子とデートしちゃえばいいのよ。」
「ちょっと待てよあかね。そんなことしたら…」
「そうじゃ。オラはシャンプーに益々愛想をつかれてしまう。」
慌てる男どもにあかねは軽く目配せして言った。
「大丈夫よ。なるようになるから。」
曖昧ではあったが妙に自信ありげな言葉に、二人は顔を見合わせた。
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