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◆◆◆
「こんにちは。」
とある昼下がり、一人の女性客が猫飯店を訪れた。
その服装からして高校生だろう。
しかし、高校生…しかも女性が一人で中華料理店に訪れることなど珍しい。
シャンプーはそう不思議に感じながらも、彼女にメニュー表を渡した。
「あの…すみません。今日はムースさんはいらっしゃらないのでしょうか?」
その一言に、シャンプーは目を丸くさせた。
「今ムースは出前に出てるある。」
何とか冷静を装い彼女に告げる。
まさかあんな冴えない男に思いを寄せる女がいるなんて、と、シャンプーは内心動揺した。
「後で伝えておくある。名前は…」
「いえ、あの…」
シャンプーがいい終える前に彼女の言葉が遮った。
「彼に直接伝えたい事があるんです。」
◆◆◆
シャンプーの機嫌が悪いことは、コロンの目から見ても明らかであった。
というのも、先程の一件があってのことである。
先程の一件を回想するとこうなる。
あの後わりと早くムースは出前を終えて戻ってきた。
女はムースを見るや否やすぐさま立ち上がり、顔を可愛らしく赤らめながら彼に思いを告げ、「今度の日曜、絶対に○公園の前に来てくださいね」と半ば強制的に約束を取り付け、すぐに店を後にした。
ムースはシャンプー以外の女性にほぼ興味がないと言っても過言ではない。
普通であればすぐに断るはずだ。
しかし今回は違う。
ムースは咄嗟に断りを入れる事が出来ないようであった。
その理由は一つだとコロンは考える。
――きっと女が、シャンプーに何処と無く似ていたから。
ムースはどこか上の空であるし、シャンプーは気が立っている。
今日は早めに店じまいをするか、とコロンは小さく溜め息を吐いた。
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