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「ムースさん、何頼みますか?」

玲子がメニュー表を取り出し、ムースの方に向けた。私は苺パフェにしよう、と楽しげに玲子は話す。

ここは商店街の喫茶店。玲子に連れられ二人はやって来た。

「オラはコーヒーにしておくだ。」

手早く注文し、二人は沈黙に陥る。

「玲子、お前はオラの何処がいいんじゃ?」

その沈黙に耐えきれなかったのか、ムースは玲子に問いかけた。

しかしそれはデートに誘われたときから感じていた事だ。悲しいことに、ムースは今まで一度も女に言い寄られことがなかった為、疑問に思っていたのだ。


「一途なところです。」


考えるそぶりも見せずに、玲子は即答した。

「ムースさんて、シャンプーさんのことが好きなんでしょ?」

ムースはゴクリと喉を鳴らす。
それは図星の意だった。


「そんなに動揺しなくても大丈夫ですよ。わかってますから。」

「じゃあ、なんで…」

ムースの疑問に玲子は笑う。

「ムースさんと付き合えるなんて思ってません。私はただ、ムースさんとの思い出が欲しかったんです。」

私なんかがシャンプーさんに敵うはず無いですから。と、眉を下げた。

◆◆◆

少し離れた席でパフェを頬張る女と化した乱馬は、向かいに座るあかねをちらりと見た。

あかねは少し寂しそうに玲子の話を聞いている。

「玲子ちゃんすごいなあ。」

頬杖をつきながらぽそりと呟いた言葉に、乱馬は首を傾げた。

「何がすごいんだ?」

「だって、報われないって分かってて想いを伝えたのよ。私には出来なかったわ。」

玲子を見てあかねが思い出したのは、まだ彼女の髪が腰あたりまであった頃の情景。

あの頃のあかねは、意中の医者に玉砕すると分かっていて告白する勇気など持ち合わせていなかった。

「ふーん。」

乱馬はさも興味が無いような素振りでパフェを頬張る。
しかしあかねは知っている。何も気にしてない様子の乱馬が、実は物凄くあかねの話に動揺していることを。

そんな彼を見て、あかねはくすっと笑った。


「馬鹿ね、昔の事じゃない。今は乱馬が好きなんだから心配しなくてもいいのよ。」


乱馬はスプーンを動かすのを止めて固まる。

「…おう。」

その顔は、パフェに乗っている熟した苺のように真っ赤だった。


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