短編小説 | ナノ
「□図書委員の憂鬱」





私、天道あかねは図書委員。

今日も図書委員は大忙しです。



◇◆◇




「天道さん、これ本棚に直しておいて貰えるかしら。」



図書室の先生が、私に本を手渡す。



―…またか。


そこに渡されたのは、本棚の一番上の本。



そして、この学校の図書室は異様に本棚が高い。



背の高くない私は、いつも脚立を使って本を直していた。


それが、憂鬱でたまらない。



第一、背の高い男子がやれば良いことなのに。



でも、私の性格上任された事はきちんと最後までやり遂げていた。



図書委員の仕事は、放課後にまで及ぶ。




先生は、どうやら出張みたい。



同じ日の係りの子は風邪でお休み。



つまり、今日返された分は私が全部直さなきゃいけないって事ね。



返却ボックスを見る。




「…今日の返却本多いなぁ。」




思わず、口から言葉がこぼれる。



それに、放課後返しに来る生徒も居るからさらに増えることだろう。





ガラガラ…




案の定、返しにくる生徒が次々にやってきた。





あ〜…もう、なんで私図書委員になったんだろ。




口から出るのはため息ばかり。

時計は刻々と時間を刻む。


訪問者が途絶えた後も、私はせっせと脚立を使って本を片付けていた。



が、




ガラガラガラ




乱暴に扉の開く音がする。



また、返却する生徒か…

そう思ってたところだった。





「…ん?あかね、お前図書委員だったのか。」






聞こえてきたのは、聞き馴染みのある声。乱馬だった。




「…まあね。乱馬も返却?あんたでも本は借りたりするのね。」



いつもの通り、憎まれ口を叩いてしまう私。




「ったく、かわいくねぇな。格闘の本だっつの。どこに置きゃぁ良いんだ?」




そこ、と私は指を刺す。




「ん、ここか。」




しゅ、と乱馬は本を投げる。


丁度、返却ボックスには入ったんだけど…もうちょっと丁寧に使う気は無いのか。



「乱馬、本は投げる物じゃないわよ。」




「あー、悪りぃ悪りぃ。」




生返事だけの乱馬にちょっとムッとする。





「私がいつもどれだけ本の為に頑張ってると思ってんのよ、ばかっ!!」


思わず脚立の上から叫んでしまう。




その時だった。



グラッ…




「え…きゃぁっ!!」




足元が急に不安定になり、視界に天井が映し出される。


脚立が傾いたのだろう。急な事で、受身が取れそうにない。



このままだと頭ぶつけちゃう…!!


痛みを予想して、私は身構える。


しかし、想像していた衝撃は訪れ無かった。




「ったく、相変わらず凶暴だなお前は。」



乱馬の顔が目の前にある。


え…




私は乱馬に抱えられていた。



俗に言う、お姫様抱っこ状態だ。



放心している私に、乱馬は言った。



「しょうがねぇな。手伝ってやるか。ほら、立て。」


乱馬の腕から解放される。


乱馬の頬が赤い。

きっと、私もそんな状態なんだろう。



「ちゃっちゃと終わらせて早く帰ろうぜ。」



「…うん!」




私は笑顔で答えた。




すみません、前言撤回します。





…図書委員で良かった!!




end


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