「■初恋」
何気なくだけど、私には知りたい事があった。
「ねぇ乱馬、あんたの初恋っていつ?どんな人?」
そう問いかけたとたんに、乱馬は飲んでいた麦茶を吹き出した。
「な、な、なんだよ急に。」
「全く汚いわね…ただ、ふと気になっただけよ。」
私は、乱馬の吹きこぼした麦茶を拭きながら答えた。
「初恋ね…。」
あぐらをかきながら、乱馬は天井を見つめた。
「中学ん時かな。凄く綺麗で、優しい人だった。」
乱馬は、ゆっくりと言った。
…分かってた。
乱馬にだって、初恋があるってこと。
でも、ちょっとだけ期待していた自分がいた。
乱馬の初恋は、私なんじゃないかって。
自分の初恋は、別の人だった癖にね。
思わず、鼻で笑ってしまう。
なんて自惚れ。なんて浅ましい女。
そう思っていると、自然に涙が溢れてきた。
「…泣くんじゃねぇよ。」
乱馬は、そっと私の涙を拭った。
「初恋なんて気にすんなよ。大事なのは、今誰を好きなのかって事だろ?」
しゃくりあげて泣く私と、優しく諭す乱馬。まるで私、あやされている子どもみたい。
「俺だってその…お前の初恋の東風先生が気にならない訳じゃねぇ。けどさ、俺が信じてるのはあかねの言葉だけ。」
そして、今流してる涙もさ。と、乱馬は優しく笑った。
「だからあかねにも俺のことを信じてほしい。今俺が、すっ…好きなのは、あかねだけだって事。」
私はコクンと頷いた。
でもきっと、涙は当分止まらない。
乱馬が今、私を一番大事に思ってくれてるのは分かるわ。
でも私、ずるい女。
乱馬の初恋
乱馬の初めてのキス
乱馬の幼なじみのポジション
私…
きっと、乱馬の全てが欲しかった。
end
2011/10/9