短編小説 | ナノ
「■夢に落ちて」




未来のお話です。
あかねちゃん身籠り中。

◆◆◆

夢から覚めて、急に押し寄せる不安の波は消えなくて。

今日もお前の慰めで夢へと落ちる。


◆◆◆


「なあ、あかね。」

「…ん?」

隣で眠りに落ちつつある愛しい人に問いかける。


「俺の事、好き?」


「何。急にどうしたの。」


俺らしくないと思っても、その不安が消える事の無い日々。

「ずっと傍にいてくれるよな?俺の前から居なくなったりしねえよな?」

自分でも何故このような下らない事を問いかけるのか分からなかったが、問いかけられずには居られなかった。

「…ずっと一緒だよ。ずっと傍にいてあげる。」


「本当か?」


「嘘なんかつくわけ無いでしょ。私か乱馬が死なない限りはずっと一緒よ。」


――死。

その言葉に胸が苦しくなり、その痛みを紛らわそうとあかねを強く抱きしめる。

「死なないでくれ。」

軽々しくそんな事を言ってみせるけど、俺の中ではとても重要で。


「…無理よ。人間だもん。でもね、約束する。この子と貴方のために長く生きるって。」

あかねは、お腹を愛おしそうにさすった。

「…ああ、そうだな。」

「それに。もし私が乱馬より早く死んじゃっても、この子がきっと貴方を愛し続けてくれるわ。だから、そんな寂しそうな顔しないで。」


どうやら俺は、自分でも気付かないうちに悲しい表情をしていたらしい。

しかしながらその不安を消し去ることはなかなか出来なくて。


「なあ、キスしていいか?」


お前や他の誰からも愛されなくなる不安の夢から逃げるべく。

あかねの唇を最後に俺はまた、夢に落ちる。


end

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