短編小説 | ナノ
「■To me」





結婚式の前日。


特に意味も無く、私は部屋の片付けをしていた。





「もしもし。これからの私、聞こえてますか?私は今、幸せですか?」





偶然見つけた、幼い頃に使っていたミュージックプレイヤーにのこされていたのは、幼い私の声だった。



「懐かしいなぁ。確かこれ、友達と一緒に未来の自分に宛てた伝言だっけ。」


その時の事を思い出して、私は思わず目を細めた。


あの頃は確か、お母さんが死んじゃって、東風先生に想いを寄せていた頃だ。


あの時私は、幸せというものを信じていなかった。


許嫁の存在も知らず、ゴタゴタも無く平和だったあの頃。




「あかねーっ、何してんだ?早く行かないと区役所閉まるぞ!」





そんな時聞こえた、許嫁の声。


そうだった。


今から私たちは、今から大きな一つの契りを交わしに行く。




「うん、今行く!!」





そして私は、手の内にある古ぼけたミュージックプレイヤーの、録音ボタンを押した。





「もしもし。今までの私、聞こえてますか?私は今、とっても幸せです。」





end

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