2
◆◆◆
「乱馬…?」
唇をやっとの事で解放されたあかねは、至近距離で乱馬の顔を見て、はっとした。
…乱馬は、今にも泣きそうな顔をしていた。
先ほどから乱馬に対して感じていた怒りと恐怖など、瞬時に消え失せてしまう。
「…行くなよ。」
「え…?」
「他の男のところなんかに、行くなよ…!!」
絞り出すような声で、乱馬は言った。
「…石川の事、好きなのか?」
乱馬はあかねに問いかける。
「そんな訳ないわ…私は乱馬が…。」
「じゃあ!!」
乱馬は一段と大きな声を張り上げる。
「じゃあなんで、最近俺に冷たいんだよ…!!」
いつも強気な乱馬が、震えている。
それを見たあかねは、いかに自分が乱馬を傷付けてしまったのかに気付いた。
「わ、私、そんなつもりじゃなかったの…。」
震えるその頬を、ゆっくりなぞる。
「なびきお姉ちゃんがね…」
あかねはすべてを話し始めた。
◆◆◆
「そーゆう事かよ…。」
すべてを聞いた乱馬は、今までの悩みは何だったんだと言わんばかりに脱力していた。
「だって、嫌だったのよ。乱馬のせいで自分がどんどん嫌な子になっていくのが。」
あかねは目を伏せながら言った。
「…この際聞いときたいんだけどさ。」
「ん?」
そんなあかねをちらっと横目で見つつ、乱馬は頬を掻きながら聞いた。
「あかねは、俺のこと好きなのか?」
ぼん!
瞬時にあかねの頬が染まる。
「な、な、何言って…!」
動揺するあかねを見て、乱馬は更にあかねに詰め寄る。
「…それとも、石川が好きなのかよ?」
その言葉に、ああもう、この男は。と、言わんばかりにあかねはそっぽを向く。
…あかねの心は、とうに決まっている。
これからも、きっと揺らぐことの無い想い。
乱馬だって、きっと分かってる。
でも、言葉にしないと不安になるんだ。
乱馬の気持ちは痛いほど分かるの。
…私と乱馬は、似てるから。
でもまさか、女の私から言わせるなんてね。
あきれ半分照れ隠し半分で、あかねはクスッと笑った。
「私は乱馬が好きよ。誰よりも、ね。」
その言葉を最後に、私は優しく抱きしめられた。
[ 5/8 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]