その後もあかねは、なびきのアドバイス通りに動いた。

乱馬は相変わらずあかねに素っ気ない態度をとられ
、必要な事以外あまり話さないといった状態になっていた。


事情を知るよしもない乱馬は、ただその状態を指をくわえて見ている事しか出来なかった。


しかし、そんな状態は長くは続かなかった。


◆◆◆


その日、乱馬は放課後にサッカー部の助っ人をし、教室に起きっぱなしであった荷物を取りに向かった。


教室の前まで来て、二つの人影が見えたことにより、教室に誰かがいることが分かる。


聞き覚えのある男と女の声。


――あかねと石川だ…。


乱馬は教室をこっそりと覗き見た。


「それでね…」


あかねの楽しげな声が乱馬の耳に届く。



それだけで乱馬を憤らせるのには十分だったが、それを上回る光景を乱馬は見せられる事になる。



何かにつまずいたのであろうあかねの体が傾き、石川がその華奢な体を腕で支えたのだ。


それだけならまだいい。


あかねの頬が、ほんのりと朱色に染まっていたのだ。


それを見た乱馬は、考えるよりも先に、身体が動いていた。



「…んにしてんだよ。」



乱馬の低い声が、教室にこだました。


その声には、殺気さえ感じられる。





「何って…委員か…」

「へぇ…そうやって抱き合ってんのが?」


乱馬は二人を見る。


あかねはそこで初めて自分の置かれている現状に気が付いた。


確かにこれは、はたからみると抱き合っているようにしか見えないだろう。と。



「来い!」



ガシッと乱馬はあかねの二の腕を掴み、窓から教室を飛び出した。



◆◆◆






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