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私と乱馬。
お互いにそっぽをむけば喧嘩しちゃうし、お互いに向き合えば素直に好きだって言うことができるの。
そう。
――私達はまるで、マグネット。
◆◆◆
憂鬱で堪らないといったような表情で、あかねは帰路を歩く。
道の脇にあるフェンスには、何時もの乱馬の姿は無い。
どうしてあの男は、はっきりと引導を渡せないのか―…
そんな気持ちで、あかねはいっぱいだった。
そう、乱馬は何時ものようにシャンプーに付きまとわれ、逃げ回っているのだ。
胸の中には、嫌な感情。
…乱馬に会う前の私、こんな感情知らなかった。
あかねはふと、そう思い、立ち止まる。
私、だんだん嫌な子になってる。
どうしたらこの感情を消すことが出来るのだろうかと模索をしてみるが、自分一人では解決出来そうに無い。
何の解決策も見つけられぬまま、あかねは帰宅した。
「どうしたのよあかね。この世の終わりみたいな顔して。」
ま、想像はつくけど。と付け加え、なびきは言った
「…乱馬くんのことでしょ。かわいい妹のためだわ、今回は無料で相談に乗ってあげる。」
あかねは、何時もなびきには見透かされしまうなと感じた。
「ありがとう。実はね…。」
あかねは、素直になびきに話し始めた。
◆◆◆
「なるほどね…。」
全てを話し終えた後、なびきは組んでいた足を解き、悟ったような顔つきで言った。
「要するに、あかねは乱馬くんのこと気にしすぎなのよ。もっと違うことに熱中してみたりして、乱馬くんから気を逸らしてみたら?」
確かにそうだ。
私、最近乱馬のことばかり考えてる。
あかねは妙になびきのアドバイスに説得力を感じた。
「ありがとう、なびきお姉ちゃん。」
あかねはそう言って、なびきの部屋から立ち去った。
「…さて、乱馬くんはどう出るのかしら。」
なびきは一人きりになった後、今後の展開を想像してにんまりと笑った。
◆◆◆
何か、熱中出来ること…
それを考えた時、思い浮かんだのはあかねの所属する図書委員会の活動が今週忙しくなるということだった。
あかねは委員会の副委員長を任されている。
元々責任感が強いあかねは、こういう仕事をかって出る事が好きだった。
そうよ、乱馬のことなんか考えてる暇なんてないんだわ。頑張らなくちゃ。
あかねは一人、ガッツポーズをかざした。
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