5
「どういうこと…。」
なびきはその女に問いかけた。
「彼女の心は傷付いてたわ。ぼろぼろにね。それも、傷は最近出来たものばかりじゃないわ。…傷付けたのは、貴方たちよ。」
「何…?」
俺達は耳を疑った。
「その結果、彼女はその痛みに耐えきれず、自ら心を壊した…。」
「元に戻す方法はあるのか?!」
俺は耐えきれずに叫んだ。
横目であかねを見る。
俺が、あかねをこんなになるまで傷付けてたなんて。
もちろん、女は俺だけが原因だとは言っていなかった。
でも、最終的にあかねが心を壊すきっかけを作ったのは、俺の言葉だ。
俺が、助けなきゃいけない。いや、助けたいんだ。
「あるわ。」
女は言った。
「貴方たちが、あかねの心の中に入って、あかねの心の歴史を見ること…。そして、あかねの心を癒すことが出来たら元に戻るわ。」
「じゃあ…」
「ただし。」
女は真剣な口調で言った。
「もし、失敗してしまえば、あかねの心はもう二度と元に戻すことは出来ないわ。」
皆が息を飲んだのがわかった。
「俺は行く。」
静かに、俺は言った。
「あたしも行くわ。」
なびきも一歩前に出た。
「…天道さん、行きましょう。」
東風先生は、おじさんに言った。
「ああ。」
その言葉を最後に、女は優しく微笑んだ。
「あかねを、どうか助けてあげて。」
女は、深くお辞儀をした。
え…?
女の心理は分からなかった。
その瞬間。
俺達は、眩い光に包まれた。
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