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気丈なふりして今まで生きてきた。
きっと、これからもそうやって生きていくんだとばかり思ってた。
でも私、本当は強くなんか無い。
お願い誰か、私の心に気付いて…。
◇◇◇
「乱馬、待つね!!」
「あーもうっ!ついてくんじゃねーよシャンプー!!」
それは、下校中のこと。
何時も通り、今日も乱馬は出前帰りのシャンプーに追いかけられてる。
「いいの、あかね?」
なびきお姉ちゃんが楽しげに私に聞いてきた。
「いいのよ、あんな奴。もうあんな光景見慣れたんだから。」
それを聞いたお姉ちゃんは、ふーんと、意味深に笑った。
…本当は、平気なんかじゃない。
今にも、胸が張り裂けそうになる。
でも、私は我慢するんだ。今までもそうしてきた。
そうしないと、私が私じゃなくなりそうで。
私は早足で家路を帰った。
◇◇◇
「何で先に帰っちまうんだよ。」
乱馬が家に帰って早々私に悪態を付いた。
「別にいーじゃない。あんたもシャンプーに追いかけられて満更でもなさそうだったし。」
あーあ、また私、かわいくないこと言ってる。
口と心は裏腹で、意地っ張りな私の口はこういう時、必ず本当のことを発してはくれない。
そして、その言葉に乱馬はカチンときたようで。
ケンカ越しに言った。
「ったく、かわいくねーな!!ま、そーだな。確かにシャンプーは誰かさんと違って素直でかわいいしな。」
パリン
乱馬の台詞に、何かが割れた音がした。
その言葉は、私にとっての鬼門だったのかも知れない。
震えが止まらなかった。
「…そう、分かったわ。じゃあさっさとシャンプーと付き合えば良いじゃない!!乱馬のばかっ!!」
私はそう吐き捨てると、勢いよく家を飛び出した。
お父さんやお姉ちゃんたちの声が聞こえた気がしたけど、そんなことかまわなかった。
…もう、私限界よ。
心が、苦しいの。
今まで溜めていた、辛い気持ちが今にも溢れ出しそうで。
胸元をギュッと握り締めたその時。
「心が苦しいの…?」
背後から、声が聞こえた。
そこに立っていたのは、ベールで隠しているから顔はよく分からないけど、女性だったと思う。
「嫌なこと忘れさせてあげようか?」
その女性は、柔らかく笑った。
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