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その後、ベールを纏った優しげな女性はあかね達の母親だったのではないかという結論に至った。
あかねが苦しんでいる事に耐えかねて、このような騒ぎを起こしたのではないか、と。
「お母さんは、ずっと私達を見守ってくれてたのね。」
家に帰る帰路で、あかねはスッキリとした面持ちで穏やかに言った。
「ああ、そうだな。」
俺は相槌を打つ。
どうやら、俺があかねの心の中で話した事は覚えてないらしい。
何だかちょっと悔しいが、それはそれで良いと思った。
俺は、もうあかねを傷付けたりなんかしないから―…。
そんな決意をする、きっかけになったから。
俺はいつものフェンスから飛び降り、あかねの耳元で小さく、でもはっきりと言った。
もう俺は逃げたりしない。
お前を傷付けたりしない。
あかねが言葉にしないと分からないなら、これからだって何度でも言ってやる。
「―…俺は、おじさんやかすみさん、なびき達がお前を愛する気持ち、そしてシャンプーや右京、小太刀達よりも――
…誰よりもあかねを愛してる。」
そして、予想通りその言葉に真っ赤になったあかねに、
俺はそっと、口付けた。
もう、あかねが傷付く事はないだろう。
…愛して、愛される事を知ったから。
そんな俺達を、夜空だけがそっと、見守っていた…。
end
以下後書き
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