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結局は誰も、悪くなんて無かった。
ただ、あかねの心は傷付きやすくなっていた…。
全てはあの日から始まったんだ。母親の冷たくなる様を見た、あの日から―…。
そしてあかねは、愛されるということに疎くなっていた。
誰かに愛して欲しいと願うようになった。
――あかねのばか野郎っ…愛されてないわけねぇだろっ…!!。
愛してなかったら、おじさんだって、なびきだって、あかねが望んだ愛の意味は違えど東風先生だって此処に来たりしない。
そして俺だって、自信をもって言える。
…誰よりもあかねを愛してるって。
本人の前で言えないことが難点だけどな…。
「あかねぇ〜っ!!お父さんはお前を愛してるよ〜っ!」
おじさんは、いつものように泣き叫んだ。
なびきは、何も言わずに唇を噛みしめている。
その時だった。
急に靄が晴れ、一人しか入れ無いような、真っ暗な空間が現れた。
きっとこれが、あかねの心と向き合える空間。
「…乱馬くん、任せたよ。」
さっきとはうって変わって、おじさんは真剣な面持ちで言った。
「ああ!」
その瞬間、おじさんとなびきは消えた。
俺は、勢いよくその空間に飛び込んだ。
◇◇◇
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