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「東風先生は、なぜいきなり…。」
おじさんは、やはり東風先生が急に消えた事に驚いていた。
「その理由が、多分今から分かるんじゃないかしら。」
流石、勘の良いなびき。
そしてその考え通り、あかねと東風先生が写し出された。
『ほらあかねちゃん、これでもう痛くないだろう?』
『うん、東風先生ありがとう!!』
小さなあかねの無邪気に笑う様と東風先生の様子を、俺はなんとも言えない気持ちで見る他無かった。
「あかね、もしかして東風先生の事好きだったんじゃないかしら。」
そんな中、なびきは言った。
「…その様子を見る限り、乱馬君は知ってたみたいね。」
「ああ…。」
俺は軽く相槌を打つ。
「でも、東風先生は…。」
おじさんは、言いかけたところで押し黙った。
そう、
東風先生は、かすみさんが好きだった――…。
(東風先生は、かすみお姉ちゃんが好き…。私もお姉ちゃんみたいに髪を伸ばしたら、東風先生は、私を見てくれるのかな…。)
あかねの心の声が聞こえる。
そこからは、あかねの健気な想いがひしひしと伝わって来た。
「あかね、そういえばこの頃から髪を伸ばし始めたわね…。」
なびきの言葉にずきずきと胸が痛む。
出来れば俺はこの辺りの映像を見たくなんて無かった。
過去の事なのに、割りきれない俺。
そんな余裕の無い自分に嫌気がさす。
そして、場面は中学生に変わっていた。
あかねの髪は初めて会った時のように、腰の辺りまで延びていた。
だけど、相変わらず東風先生の視線の先にはかすみさんしかいない――…。
(私は、かすみお姉ちゃんにはなれない…。)
何年間も積み重ねてきたその想いにピリオドを打つのは容易いことじゃない。
あかねは、ずっと東風先生が好きだった。
――例えその恋が叶うわけではないと分かっていても。
そんな想いを胸に秘めたまま、ついにその日がやって来る。
俺が、天道家に来た日だ―…。
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