過去編





静寂の中、愛鶴が私を睨み付ける。さっきまで楽しく話していた筈なのに彼女は忌々しいと私の後ろから私を見つめる。
私はそれに気が付かずに、その視線に気が付かずに幸村君に手を振っていた。

こんな状態が毎日続いていたのだろうか、気付かなかった私は二人に囲まれて幸せだった。このままでいいのに。丸井君が愛鶴をとろうとしたとき少しそう思っていたことを思い出した。夢、儚い拙い夢だったと分かりもせずに。

私は笑いながら振り返る。睨み付けている愛鶴に肩を押されて階段から落下していた。





病院のベットからやっといなくなれると思ったら寂しいような嬉しいような感情が入り交じる。私は一つ一つ本を積み上げながら息を吹き出した。明後日から学校に登校することになっている。正直行きたくない。でもこれ以上お母さんやお父さんに苦労かける訳にもいかない。学校に行かなくては。優等生な心の私がそう言った。あんな場所に行かなくてはいけないのか。地獄じゃないの。本を積み上げる手を止める。地獄はもう味わいたくはなかった。もう沢山だ。あれだけの仕打ちを受けたのだから、少しは天国を見せて欲しい。


ガラリとドアが開けられる音がする。お母さんだと分かった。荷物をとりに来てくれたんだ。それにしては時間が早いような気がするけれど、時間があまったのかしら。
顔だけをひっくり返すとお母さんとそしてお父さんが居た。お父さんはお母さんに肩を貸しながら、私を見ていた。愛鶴、みたいに。
お母さんの嗚咽が聞こえてきた。お母さんはよく泣いてしまうから、音だけでわかってしまう。お母さん、なんで泣いているの?
なにかあったの?

「友、学校側から話しは訊いた。お前」


イジメテイタそうだな



静かに耳朶に触れた言葉に私は何回絶望したらいいんだろうか。
本を積み上げる。何でもいいから私の周りには壁を作ってくれないだろうか。誰でもいい、私を隔離して欲しい。

首を振る。横に振ったあとの結末はどこかの誰かさんと同じで私は一人ぽっち

結局、誰かを思いやったところで私が報われることなどないんだ。

心にバリアを張っていつもみたいに乗り過ごそう。バリアを張ると殴られても蹴られても痛くはなかった。
きっと今回も痛くない。
だって殴られるわけじゃないのだから

お父さんの怒鳴り声が雷のように聞こえて、私は意識を離脱させた。











 
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