過去編



気が付いたらベットの中にいて、泣きそうな母をぼんやりと見えた、一面白い部屋。瞬きを繰り返すとここが病院だということが分かってきて焦ってしまった。私もしかして屋上から本当に飛び降りたとかしたのかしら。幸村君に倉庫から助けてもらったことが頭に浮かんでなんてことをやってしまったんだと思った。死なないで。そう言われた筈なのに。………ちょっと待って死なないでと誰に言われたんだったっけ?

「大丈夫かい?」

何故だか幸村君が私の手を握っていて熱が幸村君に吸いとられているようなそんな感覚がした。お母さんが言う。幸村君が見付けてくれたのよと。幸村君は言う。君は倒れていたんだよと。なんの話だと思った。私屋上から転落したんじゃないの?
倒れてたというか落ちてきたの間違いなんじゃないの?

「私、何処に倒れてたのかしら」


ああと幸村君は苦笑しながら教えてくれた。屋上に向かう階段だよと。君はそこで倒れていたんだよと。

階段……?
どうして階段なんだろう……?
……っ。もしか、して。
私は幸村君の言葉で思い出していく。私は屋上に向かっていたことを。そしてその途中愛鶴に会ったことも。その後肩を押されたことを。
グルグルと回る視界を。激痛が走ったあの瞬間を。

「い、いたい、痛い痛い痛いっ」

「えっ?!友?」


身体中が痛い、なんだこの痛さ、トラックに踏まれているような骨の軋みかた、歪んでいますと言わんばかりの音は


「腕がっ、痛いっ」


幸村君の顔が青ざめる。もしかしたら階段から落ちたときに骨折でもしたんではないかとお母さんに言っていた。お母さんは二度聞き直してナースコールボタンを押した。幸村君が私の手から指を離して大丈夫だからと何度も言い続ける。でも痛い。こんなに酷い痛みなんてない。

「痛いっ痛い痛い痛い痛い痛いっ、腕が痛いっ」

ナースさんがお医者さんとともにやってきて診察室に行けるようにと手配をし始めた。
私はずっと喚きながら呪詛のように吐き続ける。
痛い
痛い痛い痛い

痛みで頭が真っ白になった。






 
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