2-Aのクラスの前にいる、背丈のある女に後ろからコンコンとノックをするように肩を叩く。
ゆっくりと後ろを向かれたその顔は、可愛らしいというにはあまりにも普通だった。
「お前さん、哀川友か?」
「あら、人違いよ。哀川友はあっちの人、間違わないで欲しいわ」
「嘘をやめなっせ、もうバレとる」
「なんのことかしら、頭は大丈夫?」
「お前さんが哀川友であることはわかっちょる」
「……あらそうなの、じゃあ、それで哀川友になんのようかしら、ペテン師さん」
「お前さん………か」
見る限り普通の子じゃ。悪魔と言えるような人物じゃなか
「なに、騙したのが悪いのかしら。それってあなたのお家芸でしょ? それに、騙されたほうが悪いのよ」
「それは分かっとる」
「じゃあなにかしら?」
「…………」
そういえば、会ってなにをするというのは考えとらんかった。
「なにもないなら行っていいかしら。私、次は移動教室なのよ」
「……じゃったんじゃ?」
「……小さくてよく聞き取れないわよ」
「どうして嘘をついたんじゃ? 意味はなかじゃろ?」
「意味? 嘘に意味なんて必要なのかしら? それに理由なんているのかしら? 嘘をつきたかったからついた、それだけよ」
「………」
歪んどる、俺がいえることじゃなかが
「あ、そうそう、あなたに話しかけたのは意味あるわよ? なければあなたなんかに話しかけたりなんかしないもの」
「?」
「……チャイム、鳴るわよ。クラスが別なんだから早く教室戻りなさいよ。嗚呼、今日は美術室らしいから気を付けなさいよ」
騙されるわけなか、そう思って、教室に向かうと誰もおらんかった。
そして、いなくなった教室にチャイムの音が響く。
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