過去編
「よっ」
暑い、夏だから凄く暑い
そうやって下敷きでパタパタして風を送りこんでいたら、丸井くんがやってきた、なんだかあの日から本当に幸村君がいないときに頼まれているのよね……。
うーん、なんだかしゃくに落ちないわよね
「なにしにきたのよ、あなた。また幸村君になにかあるの?」
「あー、いや、今日は別件、お前に用があってよぃ」
「なにそれ、私、なにも出来ないわよ」
「なにも出来ねぇわけじゃねぇだろぃ。紹介ぐらい出来んだろぃ?」
「紹介……? なにそれ、誰をよ」
「雪羅……とか?」
「え、なに、あなた、愛鶴のこと好きなの?」
「………んー、気になってる、ぐらい」
「あの子、好きな子いるわよ」
「え、マジで? ま、でも俺なら落とせるって」
「なにそのポジティブ気持ち悪いわね、だいたい落とせるとか言わないでくれる? なんだかお遊びで付き合うみたいな感じだわ」
「なにいってんだよ、お遊びに決まってるだろぃ。だってまだ俺学生だし?」
「あー、不健全ね。少しは真田くんを見習いなさいよ」
「やなこった。で? 紹介してくれんの、くれねーの?」
「……そうね、愛鶴に聞いてあなたに会いたいって言ったらいいんじゃないかしら」
「やりぃ、じゃあ、連絡シクヨロ」
「前から思ってたけど、あなた日本語ちゃんと使いなさいよ」
シクヨロって、なんか古そうな感じだし
ひと昔前にあったような言葉だし
そう思いながら言ったのだが、丸井くんはどこ吹く風でいなくなり、そのあと私も諦めながら愛羅に相談した
その後、愛鶴は『仁王君に近付けるかも!』とOKして、愛でたく丸井君に会って仲よくなっていったのだけれども
それによって愛鶴が丸井君の推薦によってマネージャーになったのは、少しだけ驚いたのを覚えている
マネージャーといっても臨時だったから、そんなにこき使われることはなかったらしいのだけど
ともかく、それが愛鶴のマネージャーになった経緯であり、そして、私が死ぬような惨めな思いをする羽目になった、引き金でもあった