「その条件にもっとも近い人間といえば、哀川友だろうな。クラスは3-A、どうやら幸村と真田と一緒のクラスのようだ。部活は帰宅部、成績はおよそ中の下、運動能力は学年最低記録を更新し続ける、体育教師にとってもっとも苦手とされる分野、これといった友達はおらず、それといった問題を起こしているわけでもないらしい、だからといって学校生活が満たされているというわけではなさそうだ、一部からは嫌がらせを受けているともいうしな」
で、それがどうかしたか?
柳は知っていて俺にそう話しかけとるらしい。なんともまあ、性悪なことじゃ。
「………」
「そういえばお前が騙されたらしいが、哀川友となにか関連があるのか?」
「………」
「……あるのか?」
「………ある」
答えると、そうかと柳が終わったというようにパタンとノートを閉じる。
「1つ忠告しておこう、仁王」
「………なんじゃ?」
「彼女にハマるな、魅いだされるな。哀川友は―――――悪魔だ」
「そりゃあまた、大層な言い回しじゃのう、参謀」
「なんのことはない、そうなる可能性が99.99%だからだ」
「はッ、なにを言っとるんじゃよ。この仁王雅治、女にたぶらかされると思うんか?」
「ああ、彼女にならばありえる」
「そんなに可愛い女じゃなかろ?」
「顔は関係ない、性格さえも、感情さえも関係はないだろう、必要なのは心―――いや、もしかしたらそんなことさえも関係はないのかも知れないな」
「………確率、理論、それを統べる参謀がいう台詞じゃあなかな」
「……かも、しれんな」
そういうと柳はそれ以来考え込むように遠い空をみるように、見据える。
その姿がどこか、とり憑かれいるように見えたのは、それは偶然だったのだろうか
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