過去編
「……で、どう思うかしら。愛鶴」
「うーんといった方がいいんじゃないかな、いったほうが幸村君も喜ぶだろうし」
「よね、ありがとう。あなたに相談してよかったわ」
愛鶴という彼女は、よく私の話しに付き合ってくれる心優しい子だ。
よく、相談なんかにものってくれて、感謝してもしつくせないぐらい、助けてもらっている
彼女に相談した内容は昨日言われた、全国大会応援に来てくれないかという幸村君からのお願いについてであった。
なかなか私一人じゃ納得仕切れなくて、彼女に相談を持ちかけた。
彼女は笑ながら私の相談に応じてくれて、ありがたかった。
「それにしても凄いね。幸村君から誘われるだなんて」
「そんなことないわよ。どうせあいつ、私がこないだテニスって意味が分かんないわとか言ってたの聞いてむきになったのよ。あいつテニス大好きだから、ああ言われるとイラつくんですって」
「そ、そうなんだ」
「本当、子供なんだから」
「なんだか、友って幸村君のお母さんみたいだね」
「……それは冗談にならない冗談ね」
「ふふ、じゃあ、なんだかお嫁さんみたい」
「それはますます冗談にならないわよ、愛鶴」
というか、あいつの素敵な家庭生活を送れる気がしないし
なんだかんだで家を放り投げて、浮気してそう。
いや、これは偏見だけどね
「でも、いいなぁ。私なんか、仁王君に声をかけることさえ出来ないし」
「仁王?」
「……テニス部のレギュラーで、銀髪の人だよ。友ってば本当にテニス部に興味ないんだね」
「テニスしている男への理想は小四で断たれたわ、主にあいつのせいで」
「あいつ?」
「幸村君」
「あー、なんか、分かる気はするなぁ」
「で? 仁王とかいう人がどうしたのかしら?」
「えっと、その」
「? なになに、なに照れてるのよ? まさか、好きなの?」
「あーぅ! えっとね! それは、そのぉ!」
「ふふ、応援するわよ、友達だもの」
「えっ?! 本当に?」
「ええ。でもそう、恋か。いいわね」
「そ、そうかなぁ?」
赤くなる彼女は可愛かった。
恋する乙女みたいで、笑う。
彼女は困ったように笑った
「に、仁王君ってね、ミステリアスで、でもなんだかさみしやがり屋で、でも悪戯とか大好きで、負けず嫌いで、そ、そのカッコ良いの。で、でもね、人嫌いっていうか、女嫌いっていうか」
「相手にされて、ない?」
「うっ……うん、たぶん」
「告白はしたの?」
「で、ででできないよ、そんなの!」
「しちゃいなさいよ、した方が踏ん切りつくわよ」
「かかかかんたんに言わないでよ、もう、からかわないで。こっちは必死なんだから!」
拗ねたような顔がまた可愛くて、私は笑ってしまった