過去編
人間にはある分岐点があるのだという。
ハッピーエンドかバットエンドの分岐点。
間違えれば死ぬし
間違えなければ、生きれる
そんな分岐点
私はそんな分岐点を中学三年生の時に、味わうことになる
どうしようもなく、絶対的に
「全国大会?」
幸村君は私を見て笑った。
白いその顔は、まだまだ病人の顔といったところだ。
退院しているというのに、大丈夫なのかしら、こいつ。
「ああ、テニス部の全国大会のことかしら?」
「もちろんだよ」
制服を着た彼は私の机に手をついて、そう答える。
私は一息して、ため息をついた。
こいつと同じクラスになるのはいつものことだけど、だからと言ってこの大切な時期に私に話しかけることはないでしょうに
練習しなさいよ、大会負けるわよ
「その大切な大会がどうしたのかしら?」
「……あー、それは、………その」
「はっきりしないわね、珍しい」
「俺だって言いにくいものぐらいあるさ」
「へぇー」
確かに、本当に言いにくいそうだ。
もじもじしているし
大丈夫なのかしら、こいつがテニス部の部長で
でも、こいつが立海テニス部を二連覇させた部長なのだ
本当は凄い人なのだろうに
やっぱり、昔からの付き合いからか、凄い奴に感じられないのよねぇ
「あー、えーっと、そのさ」
「なによ」
「………うーん……、その、夏休み空いてる?」
「……?なんでよ」
「いや、なんとなく、かな」
「なにそれ」
「いいから、どうなんだい?」
「今のところ、なんにもないはずよ」
「……そうかっ!」
「な、なによ」
いきなりテンションが上がった幸村に若干恐怖を感じたものの、楽しそうな彼を見て、少しだけ温かい気持ちになった
「それならさ、全国大会。絶対に立海が優勝して見せるから、見に来てくれないかい?」