She Side
「テーニースー」
「テニス?」
「テーニースー部ー」
「テニス部?」
「あんた、分かっていってんでしょ」
なんのことぜよと首をふる仁王くんはなんというか、怒っていた。苦々しいほどに
「ようやく『あんた』って呼んでくれるのは嬉しいんじゃが、お前さんもうちょっと、言うことないんか?」
「なにかあったかしら」
「……へぇ」
「悪い顔しないでくれるかしら。怖いのだけれども」
「そう思うからそうなんじゃよ」
「なにそれ屁理屈」
「屁理屈じゃなか」
屁理屈よ。
言い合いしそうになるので、自重するが思ったことを心で唱えた。
「あんた、ねえ」
「で、なんじゃが」
「なによ」
「お前さん、今までのなにしおった?」
「なんで」
「ここ」
ここ、そういいながら、目の下をコンコンと叩くペテン師さん。なにがあるというのか私からじゃ見えないため、なによ、わかんないわよ。そういうと赤くなっとる。そう呟いた。
「ああ、そうかもね」
「なんで赤くなっとるんじゃ?」
「知らないわよ」
「……通常、目の下が赤くなるのは泣いたときと相場が決まっとる」
「………」
「お前さん、また泣いとったんか」
「……違うわよ、擦っただけ。そう何回もストレスは解消するものじゃないわ」
「嘘じゃな」
「なんで」
「目が泳いどる」
「泳いでないわ」
「游いどる」
「游いでないってば」
「嘘つきじゃな」
「いっ……!」
痛い!
なんでいきなり目の下を擦るのよ。
びっくりしながら、瞼を閉じていると、痛みがやらわいできた。
痛くない、痛くない。
念仏のようにそう思いながら、堪え忍んでいると、擦っていた手がどかされ、かわりになんというか生暖かい、人の吐息がかかった。そして
「………なにやってんのよ、あんた」
「ん? 痛いところには口付けをするとなおるんじゃよ」
「わかりきった嘘をつかないで。そんなの迷信さえないわ」
ペテン師さん、つまりは目の前の彼が私にキス(目の下に)する意味なんて、絶対にない。
からかってるわね、こいつ。
そう思うとむしゃくしゃしてきた。
「まあ、いいじゃろ? 唇にしたわけじゃないんだし」
「したら殴られるどころの話じゃないわよ、あんた」
「? そうなんか?」
「そりゃあね、女の子の唇はそんな柔なものじゃないの。軽はずみなんかで接吻なんかしちゃったら、お嫁にもらうぐらい考えなくちゃいけないのよ」
「!」
あからさまにびっくりしている、仁王くん。
ちょっとなんだか照れてるみたいであり、そして、なんだか慌てているようだった。プレイボーイだものね、それはまあ、いろいろと考えることあるわよね。