「ってことはよ、あの仁王が騙されたってことかよ?」
「………」
あれから幸村には散々笑われ(イラついた)、真田にはたるんどると怒鳴られ(わかっちょると言ってやった)、柳には珍しいことだとノートにとられ(消せんかった)、ジャッカルに慰められた(頭叩いてやった)。
教室に帰るとニヤニヤしたブンちゃんが待ち構えちょった、どうやらジャッカルから聞いたらしい。
「にしてもよ、仁王を騙す奴なんてびっくりな奴もいたもんだよな」
「ブンちゃん、楽しんどるだろ、今」
「そりゃあな、仁王を騙す奴なんて拝みたいものだぜ」
「……はあ」
ペシンと頭を叩くと、イテッという、ブンちゃん。なんだかイライラする。
「ブンちゃんは知らんかの、アルトボイスの奴のはずじゃ」
「アルトボイスなんかいっぱいいるだろぃ、もっと限定しろよぃ」
「限定といわれても、じゃな」
クラスが一緒だろうとは思ったのじゃが、今ではそれさえもあやしか。
騙されちょるかもしれんし、それさえも演技のような気もする。
雪羅と親しいような感じじゃったが、それも誤魔化すためかもしれん。
「他に手がかりはなかよ、………女だったというぐらいじゃ」
「そんなんで、探せるかよぃ、もっと限定しろって言ってんだよ」
「他にはそうじゃな、嘘になれちょる。なれちょるというか、嘘を言っているという罪悪感も見受けられん」
「お前みたいに?」
「俺みたいにじゃ」
「んじゃあ、柳に頼ればよくねぇ?」
「柳にか」
あの参謀に聞かなくちゃいけんとか、なんか心がギザギサしてきとる。
………まあ、よかか。
はやく、あいつを見つけ出さんといけん
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