She Side
「柳……」
「蓮二だ」
よろしく頼む。そう言われた。実は一回あなたとはあったことがあるわ、心の中にしまったそれを私は苦々しげに押し込んだ。危うく口からポロッと何かを言ってしまいそうになったからだ。
私はこの男をよく知っている。いや、知っているというか唯一先生達に聞いて調べたほどの人間だ。テニス部の参謀と名高い彼は、確かに頭がよさそうなオーラが出ていた。
「なんのよう?」
「警戒するな、俺はただ話しにきただけだ」
「テニス部の参謀様がきて、話すだけなんて信用できないわ」
「確かに、そうだろうが。本当のことだ。証拠にノートなどは持ってきていない」
そんな証拠知るわけないわよ、と反論できないところが悔しいところだ、どうやら彼は私が彼のことを探っていたことも知っているらしい。
「信用したか?」
「したくないけどね」
「それはよかった」
皮肉を分かっていて返すなんて、素晴らしいスキルをお持ちのようだわ
頭の中で皮肉を唄いながら、なによと聞いた。できれば早く帰ってほしい
「この頃、テニス部の面々と関わってなにかかわりはないだろうか」
「……ないわよ。なにそれ、アンケートでもしたいのかしら」
「いや、違う。この頃、テニス部に近付いた人間が次々と潰されていっているらしくてな。精市が心配して聞いてこいといったまでのことだ」
「そんなの、自分で聞いてくればいいじゃない、あなたを通さなくたって、聞かれれば答えるわよ」
「精市はああ見えて繊細なのだ、こないだのことだって無理をさせてしまったのではないかと気に病んでいた」
「なに、それ。乙女な」
「哀川が本当に気分が悪そうにしていたからな。精市も焦ったのだろう、俺もお前のそんな顔を見たのは初めてだった」
「顔に出ないらしいからね」
「誰かに言われたのか?」
「ええ、分かりにくいんですって」
「そうか。……では、今のところ何にも起きてはいないのだな。だが気を付けてくれ、いつ潰されるかわからない。テニス部も問題解決に専念しているが、万が一ということもあり得る」
「そう、ご忠告どうもありがとう」
「ああ、気を付けてくれ、特に暗い内にはなるべく誰かと一緒に来るべきだ」
「ええ、できるだけそうさせてもらうわ。話しはそれだけかしら、ならば私帰りたいのだけど」
「ああ、あともう一つだけ」
「なに?」
「俺からの質問なのだが、四年前、お前は本当に加害者だったのか?」
「あら、どうして?」
「だってお前はあまりにも」
雪羅を見るときの目が、哀れんでいたから
………そう
そう返すと、もういいと思ったのか、参謀様は消えていった。
私の時間はあの四年前からかわっていないのかもしれないと、初めてそう思った