She Side




「なにしとんじゃ、マネージャー」



聞き覚えがある声に私はゲッといつもの通りに拒否反応を示した。


「仁王くん。なんだかね、関係ない人がここに入っていたからどうしたのって聞いていたの」


愛鶴がまるで人が変わったように、こう、丸まった性格になった。早変わりだった。たぶん、生まれて初めてこんなにも人がコロリとかわるのを見たと思う


「勝手にのう、お前さんさっき幸村に連れられてきとらんかったか哀川友」

「………」

「黙らんでもよかろ、なんか寂しいよのう、返事して欲しか」

「……あなた達の部長に引きずられて来ましたけど、それがどうかしたかしら」

「災難じゃったのう」

「ええ、まったくね」

「えっ、部長が友を呼んだの?」

「…………おん、そうじゃよ。」

「ご、ごめん友。勝手になんか言っちゃって」

「……別に気にしてないわ。私はお邪魔でしょうから、先に帰るわね。気分悪くなったとかなんとか言って幸村くんに言い訳してくるから」

「うん? ああ、その幸村から伝達じゃ、『気分が悪くなったら寝てていいから、先にだけは帰らないでね』じゃと」

「なんだか、釈然としないから聞くのだけど、あの人って実はエスパーだったりするのかしら」


なんで考えていたことがわかるのよ


「……予知未来ぐらいは出来るんじゃなかろうか」

「…よね」

「あ、あの、仁王くん。これ」

話をぶった切られたが、それはいいとして、愛鶴がペテン師さんが差し出したのはドリンクだった。水…じゃないかな、スポーツドリンクとかなのかもしれない、まったくと言っていいほど、私はスポーツをしないからわからないのだけど


「おん、ありがとうさん」

「うんうっ、マネージャーだから私」


頬を赤らめらめる愛鶴


どこからそれだしたの、とか聞いたら雰囲気ぶち壊しよね。

しょうがない、黙っておこうかしら



「なあ、お前さん。マネージャーやるじゃなかと?」

「……私に言ってる?」


愛鶴にドリンクをもらったペテン師さんは何故か私にむかって、マネージャーをやるんじゃなかととかいう日本語を間違っているんじゃない、と現実逃避したくなるような言葉を囁いた。

そういえば、私がここにきたのってマネージャーうんたらかんたらだったわよね。

なる気はないけど


「ないわね、マネージャーなんてないない」

「幸村はやって欲しからしいがの」

「そんなの、私が知るわけないでしょう」

「酷いのう」

「酷いのはどっちよ。私、この軍団が嫌いなの」

「友!そんな言い方しなくたって!」

「あんたのことも、いいえ、あんたのことから嫌いなの。今さら友達面して名前で呼ばないでちょうだい。さっきまでは苗字だった癖に」

「ち、違うよ、さっきのは!」

「そう、そうよね。イジメテイタ私にどう接するかわかんなくなって、でしょ? 聞きあきたわよ、その言い訳は」

「違うよ、聞いて友! 私ね!」


なにが、違うのよ

なにが、違うんだか


ペテン師さんはこちらをみて、そして愛鶴をみて、ニヤリと笑った。だけどその笑みはなんというか戸惑った感じがあって、私は漬け込めると思って、ペテン師さんの方を向き直った。



「私、やっぱり帰るわ。本当に気分が悪いの。やっぱりテニス部って私にはあわないみたいね」

「…ほんか」

「幸村くんに言って帰るわ。」

「………」

「……なに?」


いきなり手を捕まれて、動きをとめる。手にはいっている力はかなり強くて痛い



「幸村はくんで呼ぶんじゃな」

「?」

「この前は神の子ってよんどったじゃろ」

「ああ、ええ、めんどくさかったのよ、神の子って呼ぶの」

「俺のペテン師さんも、長かと思わんか?」

「………? なに、ペテン師って呼ばれるの嫌なの?」

「嫌じゃなかが、お前さん俺の名前知っとるよな」

「仁王、でしょ?」

「下の名前じゃ」

「雅治?」

「それでよかよ」

「名前って信愛が出来てから呼び会うものよ、仁王くん」


じゃあ、そういって手を跳ねのけて、幸村くんのところに向かうと後ろから「難しいのう」とペテン師の声が聞こえてきた















  
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