She Side







頭の上で香水の匂いが漂った。キツい百合の香り、私は早くその匂いが消えてくれることを願いながらペンをクルリと回した。


本当に残念なことに匂いは遠退いてはくれないが、だからといって頭をあげることも癪なうえ、数学を頭の中にいれるようにノートにむかった


ルート…?
因数分解…?

なに、それおいしいのかしら?


ああ、もう

こんなの、知るわけないわ


シャーペンをカチカチと押すと、シャーペンの芯がポロッと落ちた

どうやら残り数ミリという所だったみたいで、芯を入れ治さないといけないものらしい。


「………」


頭の上にはまだ、百合匂いがある。

……ここは、本当に私にとっての敵地なのだわ、そう理解さて顔をあげる。

そこには、四年前まで見慣れていた顔があった。


雪羅愛鶴


彼女が、いた。


そこに私を見下すようにして、言葉を発することなくいた。


なにやりたいのよあんた


そう思いながら、バックから筆箱を出してシャーペンの芯を一つ抜き取る。


なんでこんなところで立ち止まって、私をガン見してんのよ、マネージャー業やりなさいよ、マネージャー業を。

私なんか見たって楽しくないでしょうに。


シャーペンの中に芯を入れ、ふるとちゃんと芯が出てきた。



「………」


ガン見……されてるわよね

視線が痛いのだけど
そして、鼻が曲がりそうなくらい匂いがキツいのだけど

どうすればいいのかしら




「…………ハアッ」


ため息をされてしまった。

したいのは私も同じなのだけれども


「な〜にやってんの、ブス子」

「………」



桑原と同類に聞こえるわ。
つうか、同類でしょ、どう考えても


「アンタぁ、テニス部じゃないでしょ。入る場所とかいろいろ違うんですケド何様のつもり? つうか、なんでこんなところで宿題してんのマジウケる」

「……」

甘ったるい声と、匂いでクラクラしてきた。去ったら横になっておこうかしら



「人の話し聞いてる? ネクラの哀川、不登校の癖に無視とかチョームカつくんですケド」


帰ってからなにしようかしら、あーあー、そうよね、あの本の続きを


「ちょっと! 聞いてんの?」

聞いてないない


確か、あの本の犯人は



「マジムカつくんですケド」


あ、そうそう、その前に宿題よね。書き出さなくちゃ。

えーっと、第一問、復習問題、3xy+4xy=

これも習ってないのだけど、どうしたらいいのかしら

















  
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