She Side



屋上にあがってあんたを見つけたとき、初めはあのマクベスとは思えなかった。
ただ知らない人が寝っころんでいるものだと思ったわ。もうこの屋上という場所は私のものじゃないのかとも思ったら辛かった。三年ぐらいかしら。幸村君は四年とかサバを読んでいたけれど、でも読まれるくらいには私はこの学校にはいなかったから。だからこの立海が乗っ取られたようで悔しかったの。だからいつかこの人に悪戯してやろうと思った。いつも屋上でふんぞりかえっている人をやっつけるだなんてちょっと面白そうじゃない?
だから機会をうかがったわ。あんた女の子をとっかえひっかえにしていて一人になる事態がなかなかなくて、苦労したのよ。私、そういう家宝は寝て待てみたいなこと嫌いなのよね。早くやって早く終わらせて、引っ掛かった顔を裏で見て私が嘘つきでどうしようもないことを自覚しようとしたの。ふんぞりかえっていたあんただったら罪悪感もないだろうと思って。でもあんたは私にしゃべりかけてきたわよね。裏でこそこそ嗅ぎまわったりして、所在を突き止めて、まさか二年生の場所で見つかるなんて思いもよらなかったわ、あれは誤算だった。それであんたがテニス部だってきいてまた誤算だったわ。柳生君とかは私のこと結構評価してくれているみたいだけど、私って結構簡単に取り返しのつかないことをやっちゃうのよね。今回もそれだった。

私はあんたに興味を持たれて、テニス部の人達とまた会って関わることになった。丸井君や幸村君、桑原君に柳生君に真田君、柳君、切原君。
切原君と柳生君、真田君とか私が当時関係なかった人達に会うのも億劫だったけど、桑原君や丸井君と会ったとき、それとなにより幸村君とあんたを通して喋ったとき、酷く怖かったわ。ぶわりとまるで腕を知らない誰かから海に引きずりこまれているような感覚だった。またあんな風になるんじゃないかって肩を揺らしていた。

でも、あんたが私に頻繁に会いに来るようにきて、いろんなものが見えたわ。今までは見えなかった色んなものが。
例えば今までみないフリをしていたあんた達の凄さとか。熱狂的なファンの応援の視線とか。青くない空だとか、雨で滲んだ雲だとか。

青春とか関係ない綺麗でも輝いてもいない、馬鹿みたいにいつも通りの風景を。見えていなかった私の青春を。私の世界を。

見せてくれたのはあなたよ仁王雅治。

幸村君はいつも道理に接してくれたわ。昔と同じ。そうね、中学二年生ぐらいのときみたいに。
丸井君はいつも道理とはいかなかった。ぎくちゃくして私も丸井君も嫌悪していた。今でも仲がいいとは言えないわ。
桑原君のことは見直した。真剣にあの子の事が好きだって分かったから。やっぱり人は一方からみちゃ駄目なんだわ



私ね。幸村君の試合を見てこの学校に再び来ようって思ったの。幸村君の試合は暖かくて優しくて、楽しそうだったわ。

私は、彼の楽しさをみれた。
だからそこからいろいろ考えてこの学校に戻ってきたの。

でも、その前の私のことを支えてくれたのはあんただった。
マクベス。
あんただった。

あんたがマクベスだってわかったとき本当にびっくりしたわよ
でもある意味で納得した。なんでだか分からないけど胸にすっーと流れてきた。

だから、言わせて欲しいの

悲しくて、悔しくて、いたくて辛くて惨めで荒んだ思いしか持っていなかった思い出だけど、けして無意味じゃなくて、無価値じゃなくて、あってよかったと思える思い出だってことを。
だから、勘違いしないでちょうだい。
私は泣いているのはけして悪いことじゃないの。

いろいろ話しちゃって混乱しているわよね。
でも、ありがとう。いろいろときいてくれて。すっきりしたわ。私って、友達愛鶴しかいなかったの、だからこんな話しきいてくれる人なんかいなかったから。

私はあんたの話しきいていないのに私はあんたに話しをきいてもらっちゃったわね。今度あんたも私になにか話しなさいよ。



ありがとう

優しいぺてん師さん







 
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