幸村精市




ここから語る事に俺はなんの意味も見出だせないけれど、それでも贖罪されるべき罪の証は綴って然るべきだと思う。だから、俺はここから俺の秘密を語ろう。誰にも語れなかった俺を語ろう。哀川友という人間が部屋に閉じこもり本にすがっていた時期の俺を語ろう。言っておくがこの俺の語りに俺を好きになる要素なんて皆無だ。皆どうか俺を嫌って欲しい。まあこんなものを見て好きになるやつなんていないだろうけど、それでも好きになった人はどうか嘘でもいいから嫌いだと言って欲しい。俺はそれを望む。人に好かれたくないわけではないけれど、こんな俺を好きになってくれるということが今の俺には許せないから、どうか彼女のかわりに嫌って欲しい。愛すべき俺の幼馴染みのかわりに、哀川友のかわりにどうか俺を好きにならないでくれ。俺はこの物語を――いや俺の話を綴るときにそれだけを望んでかく。といって嫌って欲しいからと虚栄を交えるつもりはない。真っ正直に現実にあったものだけをここに示すつもりだ。そうでなければきっとマクベスが俺を許してはくれないだろう。彼女を追いつめてしまった俺をあの男が。虚像と嘘の塊であるあの男が。

どうかこの物語をみて俺を畏怖して欲しい。俺を馬鹿だと恨んで欲しい。どうしてそんなことをしてしまったのだと蔑んで欲しい。俺はそれだけの事をしてしまった。彼女にそれだけのことをしてしまったのだ。誰が俺のことを神の子と呼んだのだろうか。全く忌々しいことに、俺は神の子なんかではなかった。

哀川友は俺のせいで不登校になってしまったのだから。
雪羅愛鶴は俺のせいで友をイジメルこととなったのだから。









 
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テーマ「人外ファンタジー」
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