過去編




「もうこないで」


家にこないで。


幸村君の顔はみるみる青くなって、だんだんと赤くなっていく。冬から秋になるみたいだと思った。

「学校にこないつもりなのかい?」


赤くなった顔が私をいじめる。幸村君がお母さんみたいな顔をした。私はいらない存在だからそんな顔をされるんだろう。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。もっと笑って欲しいのに。


でも学校なんて行きたくない
学校なんていらない
私はずっと行かない

声を出さずに心で叫んだら誰にも私を気取られる心配なんかない。頼られる私を維持できる。幸村君だけなのだ、私が頼られる存在であれるのは。もう、幸村君だけ。

ふわりと微笑んだ。きっと幸村君はお母さんみたいな顔をしたのだろう。私はぱたりとドアをしめた。私の世界に帰ってくる。私だけの世界。私しかいない。もう誰も私の悪口なんて言わないし、痛い思いをしなくてすむ。このドアは私のバリアだ。私の世界の入り口。それをしっかりと鍵をつけて閉める

ドアが叩かれた。
俺は絶対諦めないからなっ!
叫ばれた声は宇宙からきた音波のようなもので、地球にいる私には聞こえなかった










 
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