幸村精市


俺の噂のせいでキミはイジメラレルことになった。俺は原因を作った。キミが仁王なんかに目を向けないようにする為に、俺をみてくれるように。
雪羅愛鶴はキミをいじめた。なんの為には簡単に分かる。キミが仁王に近付いたから。だからキミに嫉妬してあんなことをした。彼女は実行者。彼女自身がイジメを実行したわけじゃないけれど、いじめるように仕向けた人。

……ほら、並べてみれば一目瞭然。俺と雪羅さんはとっても似てる。結局は友をいじめようとした。仲間、同士みたいな感じ。ただ、俺はみていて、雪羅さんはやり過ぎた。それだけ。変わりなんて数ミリ程度、誤差の範囲内だ。でもね、俺はそんな似ている雪羅さんが憎いよ。だって、友が学校に来なくなった理由って、雪羅さんのことが大半なんだろうから。きっとイジメラレテいた頃の友の頭の中は雪羅さんのことで頭がいっぱいだったろうから。俺のこと考えてくれてなかっただろうから。

愚かで利己的な幸村精市はあのときそう考えていた。俺だってキミのことをイジメテいたのにって、まるで雪羅さんと対戦でもしているように張り合って、友のことを考えていなかった。いや、考えてはいたんだ。いたんだよ。寧ろこの一年近く、哀川友という人間しか頭になかった。でもね、俺は、馬鹿な俺はそれでもキミの気持ちなんて、哀川友の気持ちなんて気が付かなかったんだ。雪羅さんが叫んでいた『イジメラレタクない』という言葉で気が付いてもよさそうなものだったのにね。しかし俺は、キミに守られ続けて、そして王者であり続けた俺は、忘れてしまっていた。いじめられ、人に嫌われて、貶められるという怖さが。恐ろしさが。あれはそう簡単に脱け出せるものじゃない恐怖だということが。

皆が敵に見てえ、皆信用ならなくて、一人で立ち向かうしかない恐ろしさを、悔しさを、いたさを。俺は分かっていた筈なのに、忘れてしまっていた。
寧ろ、もっとやれと、雪羅さんの靴箱につめられた色々なものを見ながらおもっていたんだ。ね、最悪だろ?だから俺のこと、嫌ってくれ。好きなんかにならないで。俺はこれからもっと、最悪なことをしてしまうから。どうか、好きにならないで欲しい。俺はそれを望む。





 
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