供述三
「俺は犯人を見た。犯人は年下だった」






監禁罪に適応されるね。ちなみに軟禁とかもひっくるめて監禁罪になるんだよ。あ、そうだこれお土産。忍足になにか持っていったほうがいいと言われてね、ミスタードーナツ。君は何が好きかな?とりあえずメジャーなものだけ二三個ずつ買ってきたから、食べたいのがあれば言って。食べさせてあげるよ。……フフフ。鳳にもされた?恥ずかしかっただろう?鳳ってそういうのあんまり気にしないほうだからね。どうせ君がいいですって言ったのにもかかわらず食べて下さいって強要したんじゃない?あたり?そっか、やっぱりね。

それでなにか食べたいのある?……飲み物が欲しい、か。それはそうだね。それなら俺のペットボトルあるけど俺が口つけたのでいいなら飲む?というか飲んでおいたほうがいいよ。多分君、脱水症状起こしているだろうからね。はい、口開いて。少しずつ飲ませるから、少しだけ顔をあげて。……うん。そんな感じ。……え?介護されてる気分だ?手を使えないってなるとやっぱり不便なんだね。でも、まあたまにはこういうのもいいんじゃないかな。こういうの普通は経験しなさそうだしね。経験しても困るだろうけどさ。

そうそう、紹介が遅れたね。俺は滝萩之介。テニス部の準レギュラーだよ。はじめまして。そろそろ気が付いているだろうけど、この君の監禁には俺たちテニス部が関わっているんだ。とはいえほとんどが客観的に、だけどね。俺や忍足、鳳は違うけど、ほとんどが関係ない。君を監禁した人間がテニス部の数人を巻き込んでいるというほうが正しいかもしれないね。だからどうかテニス部に恨みを持つのだけは止めてほしいかな。テニス部の部員に非はないんだから。


「分かっています。私は監禁した人以外を恨むつもりはありません」
「言うねー。でも、どうだろう。もし俺が君を監禁した人物だったと仮定しよう。そう言われたら俺は犯人ですと名乗り出ると思う?」
「さあ、名乗りでなくても出ても一緒ですから。私の第一目標は外へ出ること。今まで二人の会話から推測するに私の脱出には鍵が必要でその鍵を持っているのは犯人。つまり犯人探しは脱出への通り道でしかありません。犯人を憎む気持ちは強いですが、目的を見失う程恨んではいません」
「……その話、俺が犯人だったらヤバいと思わない?」
「別に?私は前にきた二人もあなたも疑わしいと思っていますから。大体三人での共犯という線もなきにしもあらずですし」
「フフフ、合理的だな。推理小説は真っ青だろうけど」
「推理小説にだって共犯というのはよくある話です。あまり好かれはしませんが」



そりゃあそうだよ。だって推理小説は探偵をどれだけ高く見せるかが重要だからね。みんなが複数でよってたかってやった戦争みたいな殺戮じゃあ品がない。トリックを使い、たった一人二人で片付けるからこそ、探偵は光るんだよ。同じ原理で犯人も光るけれどね。でも、普通の犯罪はそうだね。まあ拉致監禁は一人で出来ないこともないけれど。でも、俺たちが犯人だとしてだよ?なんで俺たちは君を監禁したんだと思う?……フフフ。案外意外な感じかな。君ならば『そんなこと知りませんよ』と言うと思ったんだけど。『殺す為』か。何か俺たちに殺意を湧かれるようなことしてしまった?認識はしていないけれど、してしまったかもしれない?ああ、フフフ、あり得るね。だって基本的な殺人の動機ってついカッとなってだもん。人は無意識に、他人に殺意を抱かせてしまうような行為をしてしまうんだろうね。でも!君は今殺されていない。カッとなってだったら君は今ここにいないよ。君はこの鉄格子の内側にいない。

……一瞬の殺意ではなく、ねぇ。計画的な犯行だったかもしれない。か。でもどうだろう、そうだとしたら君をこうやって生かしておく意味ってなんなのかな?



「さあ。私は別に犯人じゃないので分かりません。分かれません」
「フフフ、そっか君って結構諦めが早くて、他人と自分をわけて考え過ぎる人みたいだね」
「………?」
「跡部と同じだ」
「………っ」



跡部と同じは嫌だった?
跡部のこと嫌いっていう女の子は珍しいかな?跡部ってあれでいてモテるんだよ?……知ってる?……そっか。フフフ。顔が怖いな。跡部に何かされたことでもあるような顔だよ。詳しくはきかないけどさ、でもしんどくない?跡部を恨むとかさ。あいつは完璧だから、ね。……まあ、その話しはまた今度。今度はちゃんと牛乳持ってくるよ。


「ちょっと待ってください。一つだけ確認したいことがあります」
「うん、なあに?」
「あなたは犯人ですか?」
「フフフ。犯人は忍足じゃないかな?取り敢えず日吉は犯人じゃないけどね」









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