高貴さは血筋にあらず、心にあり。座右の銘を教えてくれた人は勿論のように跡部だった。幼少期、跡部に教えてもらったことはいっぱいある。これも、跡部から聞いた話の一つだった。
高貴さ、なんて現代の人が持っていても何もならない奴を、跡部は持っていたかったのだろうか。

跡部が帰っていったので、私は服を着替えた。流石にそのままの格好では寒かったからだ。張り付いたシャツを脱ぎながら、ふとポケットの中に入れた紙の存在を思い出した。クラスの机の上から拝借したものだ。コピー用紙だったから、水滴を含んで文字がふやけていた。どうにか乾かして、記憶と照らし合わせて解読を試みる。

供述一
「俺は犯人ではない。そして俺より年下は犯人ではない」

供述二
「俺は犯人ではない。そして俺の前に供述した人は嘘をついてはいない」

供述三
「俺は犯人を見た。犯人は年下だった」

供述四
「俺は犯人を知っている。犯人は俺だからだ」


書かれた内容はこうだった。私はそれをまじまじと見て、違和感を覚えた。
供述一と供述三が矛盾していることに気が付いたからだ。
年下が犯人ではないと年下が犯人である。
これは、おかしい。
どちらかが嘘をついていつのだろうか。私は、供述二を見てみる。そうすると、前に供述した人は嘘をついていないと書かれていた。仮定を考える。本当に供述一が合っている場合だ。
そうなると、年下が犯人ではなくなる。すると、霧が晴れたように犯人が分かった。簡単なことだ。供述四の人が犯人だ。彼は自ら言っているじゃないか。自分が犯人であると。供述四の人は年上だと備考で書かれていた。だから、供述三の人は四の人をかばうために嘘をついたのだろう。
確認のために、供述三の人があっているという過程をしてみる。そうすると、一の人も、二の人も、四の人も嘘をついていることになった。こんな荒唐無稽なことあるだろうか。一人を除いて全員が嘘をついているだなんて。問題として破たんしている。だから、犯人は供述四の人。嘘をついているのは供述三の人だ。

こんなの簡単なクイズだ。解けるように出題されている。
ゲーム……か。
跡部の言葉がリフレインする。私が犯人を当て切れば出られるゲーム。
記憶を辿れ、か……。
タオルの中に包まる。髪は相変わらず濡れたままだ。でも、頭はぽわっと熱っぽい。早く寝てしまおう。目を閉じて、全てをシャットアウトした。










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