「犯人が分かったかもしれない?」
「はい、そうみたいなんです」
「じゃあ、早くこんな茶番終わらせてくれませんかね」
「なんだか、日吉さんの嫌味にも慣れてきました」
「…………」
「いや、慣れたからなんだって話ですけど」
「そうですね」
「日吉さん、いつもこんな感じなんですか? 友達ちゃんといますか?」
「大きなお世話です」
「大きなお世話ふちゃらららですね」
「ふちゃらららって、わかんないなら慣用句使わなくても構いませんが」
「ど忘れしちゃっただけです」
「…………帰ります」

帰ります。帰ります。帰らせてください。
待って? はっ、なぜですか? 理由が見当たりません。だいたい、ここは埃っぽくてあまりいたくないんですが。そんなことはない? 馴染んできてる証拠ですよ。危機感を抱くべきでは?
どうせ死ぬなら場所はともかく、死に方ぐらいは選んだほうがいいですよ。このまま餓死しそうです。
…………日吉さんを殺人鬼にするのは申し訳ない?
なんで俺が貴女を殺さなくちゃいけないんですか。
その手にある食べ物? ああ、貴女用に買ってきたものですが。俺は忍足さんではないので、手作りでもなんでもないんですが。確か、グラタンでしたっけ。熱かったんでしょう? よく食べれましたね。……別に俺は猫舌というわけでは……。
買ってきたもののほうが安心する? 
犯人は忍足さんなんですか? 適当に言ってみただけであの人が貴女みたいな人を監禁するとは思いませんけど。
近いものがある? 意味が理解出来かねます。
……犯人を知ってる可能性がある?
……というか知っていた?
へえ、忍足さんが。まあ対して驚きませんね。あの人が犯人ではないことと共に想像できることではありますし。なにせ、あの人は食わせ者ですから。
とはいえ、違和感は拭えませんね。忍足さんが知っている、ね。

「日吉さんも知っているんですか?」
「その質問に答える必要あります?」
「私の好感度には影響しますよ」
「貴女の好感度には全く興味はありませんが、知っていても知っていなくてももう関係ないんじゃないですか?」
「え?」
「だって、もう犯人は分かっているんでしょう? ならば、それを本人にいうだけじゃないですか。俺が知っていても知っていなくても、関係ないですよね」
「それも、そうなんですかね?」
「そうだと思いますけど」
「流石、日吉さんです」
「理由もなく褒められるのは不愉快です」
「日吉さんと喋っていると視界がクリアになった感じがするんですよね、きっと日吉さんが冷静だからだと思いますよ」
「はあ」
「外に出られたら一緒に和菓子食べに行きましょう」
「いやですけど」
「そんなつれないこと言わないで行きましょうって!」
「……なんだか、貴女神経図太くなってませんか」
「それ、忍足さんにも言われました」
「…………厚かましい人は嫌いなんですが」
「…………」
「まあ、出られたら」
「やった!」
「散々無駄な時間を使わせたんですから、少しは恩返ししてください」

じゃあ、これここに置いておきますから。
食べさせてくれないのって、俺がですか? いやですよ。
犬食いでもなんでもして下さい。
地べたを這いつくばっても、ね。

「あはは、どSだ……」
「しかも肉まんって本当にどS……」








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