「へえ、そうなんだ。柳君ったら、来るの遅いななんて思ってたら、女の子と会っていたわけなんだね」
ふんっと、まるで子供のように拗ねる名前は少し可愛い。
どこかいつもと雰囲気が違い幼いからだ。
俺が、素直に謝るとこちらを伺うように横目でみて、顔はまだ許してないって顔を取り持ちながら、なにもなくてよかったという目付きで俺を見ている。
やっぱり、お前の方が落ち着くよ。名前
「まあ、すぐ来なくて正解だったかな。この人、襲いかかってきたし」
そう言うとかかとで寝そべる女の頭を踏みつける名前。
いつも思うが、そういう癖は今の内に治したほうがいいとは思う。
まあ、壊れたここではそういう癖も別段どうでも良さそうだが。
「怪我は?」
「ないよ」
「本当だな?」
「本当だよ」
「嘘は?」
「ついてないって」
名前のいうことはあまり信用出来ないが、見る限りではまあまあ信用出来るだろう。
俺は踏まれている女をみて、どうする?と問いかける。
「ここに置いておこう」
「いいのか?」
「うん、今日はクロワッサン大量購入っていう目的のためにこんなに遠いところ来たからね。もうこの人には会わないでしょう」
そういって、足をどかし、クロワッサンの袋を持って、歩く。
俺はその隣を歩く。
「柳君」
「なんだ」
「切原君って友達いないよね?」
「……?いいや、同級生の男友達が沢山いるぞ」
「……あっちゃあ」
――嘘ついちゃったねえ。
名前はそういうとクロワッサンと一つ袋から取り出して食べた。
俺は口を開く。
「今日はエイプリルフールだ。別にいいだろう」
そういえばそうだったね。
名前は感心したように頷いた。