「んっ」


`苗字先輩が消えたので駅で待ってます。´

そうメールを打って、送信をしたのだが、先輩からの返信はない。

「怒ってるやろか?」

そうだとしたら勘弁して欲しい。
先輩は怒ると目も合わせてくれなくなるのだ。
年甲斐もなく、本能に忠実過ぎて子供みたいな人やから


「ぜんざい、先輩が来たら買ってやろう」

それでご機嫌取りだ。
俺がちゃんと見てなかったことにも問題がある。
ぜんざい位で許してくれるかはともかくだけど。


「駅にぜんざいを売っているところはなかったように思うけど、どうするの?」
「そうですね、そやったらあるところまでひっと走りいって…………誰やアンタ」


ついつい、先輩みたいなしゃべり方やから答えてしもたけど、誰やこいつ。

目の前には知らない女がいた。(しかもクロワッサンを大量に購入している)


なんでこんなにクロワッサンだらけなんや。
ジャムでも買いすぎたんかいな。


「ああ、ごめんごめん。その意見は最もだよ。私は苗字名前、ご覧の通り普通の立海生だ。君は、財前光君だよね?」
「そうやけど、なんで俺の名前……」
「切原君から聞いているよ。彼、二年生関係の友達少ないから、友達関係を聞くとだいたい他校の人間なんだ。だから、君のことを聞いた」


………なんや
切原、やっぱお前、クラス馴染めとらんのか。
いや、俺もやけどさ。
部活にいる先輩らといるとどうも、馴染めへんよな……。


「まあ、これからも切原君をよろしくね。彼、見た目もああで中身もああだから、女の子にはモテるんだけど男友達は先輩ばかりだから。全く、立海が大学まであるから助かるけれど、普通の学校だったら孤立してるよ」

よく喋る先輩やな…。
つうか、先輩か?
まあ、切原のことを呼び捨てや、ましては先輩いっとらんから、年上やとは思うけど。

なんや、しゃべり方が苗字先輩に似とるから、勝手に先輩やて決めつけとるな。
治さんとあかんな。


「おっと、で、なんだけど。ぜんざい屋さんはここら辺一体に全然ないから諦めたほうがいいと思うよ?」
「そうなんすか?」
「うん。ここら辺では見当たらないから、たぶんないよ。諦めて他のにするのはどうかな?白玉とかならば売ってあるから」
「……うー」


でも、苗字先輩ぜんざい好きやしな。
なんでも『ぜんざいが好きだから、ざいぜん君も好きなんだよ』
らしい。
俺はついでですか。
と落ち込みそうになったが、先輩がまだ俺のこと好きなんだったらよかった。

先輩、なんや、好きな人好き。
嫌いな人はとことん嫌い。

なタイプに似通っとるし。

「なあ」
「うん?なあに」
「白玉、女好き?」
「人によるけど、私は好きだよ。さっぱりしてて腹持ちもいいし」
「………」

参考にならへんかった。
でもまあ、流石にぜんざいないんやし、先輩も我慢してくれるやろ。


「……じゃあ、ぜんざい買うことにしますわ」
「そう?それはよかった。白玉が売ってあるところは右行って二店通った先だから」
「ああ、ありがとうございました」
「いいや、気にしないでよ。お役にたてたら嬉しい限りだよ、ああそうそう、ここらへんは危ないから気を付けてね。立海生を見たらすぐ逃げた方がいい」
「やったらあんたみて逃げんばんやないですか」
「本当はそうしてくれたほうがいいと思うんだけどね。でも今日は両手塞がっているし、なにも出来ないよ」


なんや、その言い方。
まるで、両手が使えたらなんかあるような、そんな言い方。

それじゃあと、クロワッサンの袋を顔半分隠すように抱えてその人は横切っていく。
なんや、親切な人、やったんか?

まあええか。
俺は右に曲がって、二店先の店に――――――行きたくても行けなかった。

右に曲がったとたん、ナイフ掲げた女が奇声をあげながらこっちに
こっちに迫りよってきたからだ。
まるで武者のように
まるで落武者のように
恨み怨みつらみ辛い
ギャアアアアアアアと、叫び声を上げながら、俺に向かってきた。

そして、俺に向かってきて、―――通り過ぎた。
するっと。
俺が目的ではなかったみたいだ。

俺は好奇心から、後ろを振り向く。

女の向かう先には、さっきの女が、クロワッサンを置いて、駅の大理石の壁に背中を任せるようにして、こちらを見ていた。
こちらというか。
ナイフを持っていた女を見ていた。


「やあ、どうしてそんなに怒っているの?三槽さん」

女の、まるでたしなめるような声色がもれる。
俺まで伝わってくる。
その言葉だけを聞くとナイフなんて武器、掲げていないように思える。
だけど、本当に武器は存在するし。


「殺されそうになっとるんも嘘やない……」


非日常が俺の回りを回っている。
先輩と離れるからこんなことになるやな。
ほよ、先輩と合流しよ



俺は取り合えず全スルースキルを用いて、白玉を買いにいった。

帰ってくると、ナイフを持っていた女は背負い締めをされて、動けなくなっていた。

現実的じゃ一個もないわ。

俺は先輩に電話する。

先輩の携帯は現在圏外だった






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