―――最悪だ。
心の中どころの騒ぎじゃない。私は立海七不思議の狂い桜(冬なのに桜が満開のため)の下に来て、みっともなく、年甲斐もなく泣いていた。
スンスンと大声を出さないように、ひっそりと泣いていた。

狂い桜は皆に敬遠されるため、近くには誰一人だっていない。私はそれをいいことに体育座りをして頭を膝に擦り付けて、スカートを濡らす。


チョコレート
イチゴ味のチョコレート
まさか本人に渡す前に壊されるなんて思いもしなかった。
しかも、目の前にあったのに守りきれずにだなんて。
もう一度時間を巻き戻したい。もう一度あれば私はバレンタイン、彼に綺麗なチョコを渡せただろうに。

奥歯と奥歯にぐっと力を入れて噛み締めるように食い縛った。


もう、諦めよう。
ただでさえ、チョコレートは近くのお店でも品切れなんだ。今からお店にいったって手作り所か義理さえ買うことなんて出来ない。

運がなかったと
縁がなかったと
諦めるしかない。

私はそういう運命なんだから。
だいたい、丸井君が困るかもしれない。
幼なじみからのバレンタインだなんて、とても困るはずだ。
漫画からの知識だから合っているはず。

私はラッピングを外す。
もう食べて仕舞おう。
バリバリと紙を破いていくと、袋に包まれたチョコレートが姿を表した。

勿論、ボロボロだった
ぼろ雑巾みたい。
なんて、比喩じゃないほどだった

袋に手をかける。次は袋をボロボロにするつもりで、手をかけた。
そして、その時


まるで救世主のように丸井君は現れた。


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