『名前』

「うん、何かな、跡部君」

なにか負け犬のような言葉でも言ってくれるのだろうか?


『テメェは必ず氷帝に来る』

「……ハッタリはきかないよ」


機嫌がいきなり低下した。なんだ、この自信は。なんだ、何故不機嫌になっていない?



『ハッ、ハハハッ、ちげぇよ、予知してやってんだ。大体テメェは俺様がテメェが何故非通知に出たかと疑問に思わねえと思ったか』

「それは……」

『簡単だったぜ、テメェが俺様に意図的に電話をかけさせたと理解するのはよ』

「……へえ」


繕ってみせた外見がつり上がるのが分かった。バレた。悔しくてたまらない


『そして、お前が再三に渡る俺からの勧誘に辟易してくることが原因じゃねえかと思い至った。つまりお前の言いそうなことは前もって理解していたってことだ。おいおい、爪が甘いのはどっちだよ、名前。テメェ俺に気付かせちまったじゃねぇか、アーン?』

「………」


『あと、テメェは嘘を一つついてやがるな。氷帝に行かないことは決定事項じゃねえよな。テメェは十分氷帝進学も視野に入れてんだろ?』


「なんで、それを?」

『ハッ、わかんねえのか?テメェは舞得江間のかわりに氷帝に来てただろうが。普通、進学を考えねぇ奴が氷帝なんざに三週間も居たいと思わねぇだろ?しかも中学二年生の夏という中途半端な時期にな』


中学二年生の初夏。私は氷帝に舞得江間として行っていた。目的は学校見学。私は確かに進学先に氷帝はどうだろうかと検討している。氷帝は私のりにかなっている場所だからだ。


『悔しそうな顔が目に浮かぶぜ、アーン?テメェ思っていたより嘘つくの下手だな、苗字名前。一回嘘をつく方法を学び直したほうがいいんじゃねえか?』

「ふふふ、大きな御世話だよ、王様」


無理矢理通話を切って電源を落とす。布団にねそべるとさっきの跡部君の言葉が蘇った。
『嘘つくの下手だな』
そんなの、自分でも知っているよ。

「あー、駄目だやっぱり跡部君苦手」


目線をずらして息をつく。疲れた。寝よう。昼の日差しそのままに布団の上に丸くなると私はそのまま目を閉じた。




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