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久しぶりに会った先輩は微笑を湛えていて、少しだけ昔にタイムスリップしたような懐かしい感覚に包まれた


「お久しぶりですっ!」

「うん、お久しぶり、鳳君」



風の音と一緒に流れてくる抑揚ある澄んだ声に元気よく答えると、先輩の隣にいた日吉が小皺を眉あたりに寄せた。

携帯で連絡とったときは機嫌良かった筈なのになぁ……。そう思いながらも、今回気にすべきは先輩だから、日吉のことは後回しだ。

先輩の手をとって学校から手配された車に導くと先輩が小さく呟くのがわかった。


「鳳君は私のこと好きじゃないんじゃなかったの?」

「いえっ、そのっ、面子さんのことでまだ気にしているようなら謝りますっ、でも、好きじゃないとかじゃありませんっ!」


寧ろあの時から尊敬してるんです!
跡部さんと渡り合った先輩に学びたいと思ったんです!


「そう、なら良いけど」


車に映った先輩は困ったように目を開いて、眉を下げていた。俺ははっとして先輩を見る。もしかしたら迷惑なんじゃないだろうか。先輩にとって俺はあの時確かに敵だったのだから。


「あの」

「いい加減離せよ、鳳」


「え、何をだよ日吉?」
「手!何時まで握ってんだ」

「あ、あああっ、すいませんっ」


すぐに手を離して謝ると上からふふふと笑みをもらす声がきこえてきた。どうやら先輩らしい。こんな風に笑うんだ……。
俺は知らなかった。先輩の笑い方を、知らなかった。


「別に謝らなくてもいいよ。私としてはもうちょっと手を結んでいて良かったと思うけど」

「え、えええっ!」


声を張り上げると無言で日吉から叩かれた。なんなんだよ、何か言えよと思って口を開こうとしたら先に日吉に口を開かれて遮られた。


「飛行機の時間もある、鳳早く帰るぞ」

「飛行機で来たんだ」

「ええ、飛行機からの迎えがこれだっただけで車ではきていないんです」


愛想のない声で坦々と言う日吉に感心そうに頷く先輩。なんだか仲良さそう。
わかってるって感じがする。


「因みに飛行機は何時のやつ?」

「三時前ですね」

「じゃあもうそろそろ行かなくちゃいけないね。チョコは多いかな?」

「袋には入れてきました、が跡部さんのが異常に大きいです」

「跡部君のだけ返品していい?」

「棄てて下さい」

「運ぶのが疲れたらね」


スラスラと二人だけのペースで話し出す二人に少しだけムッとしながら、俺も参加出来るようなタイミングを狙う。

あ、れ。

ぱちりと苗字先輩と目が合い、微笑まれた。

その顔には見定めるような目線があっているような気がした。



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