懐中電灯を照すと蛾が集まってきて気持ち悪いという心情と酷似していたのだと思う。


その光景をみて私は眉を潜め、悪態をついた。

結局はただの嫉妬だとは理解していたつもりだった。でも、ただ目の前の女が偉そうにふんぞり返っている姿が我慢ならなかったのだ。

私は懐中電灯を元に戻した。途端に光は消えて蛾は集まるのを止めた。まるでもう意味はないと言わんばかりのその行動に腹をたてながらどこか安心していた自分がいた。独占したいとでも思っていたのかなぁ……。

それは分からない。


ただ、懐中電灯は私にとっては紛れもない英雄だった。だから誰にも触らせたくはなかった。出来ないと知りながらも小さな手で懐中電灯を隠そうとしたのだ。臆病者の私がやっと手にいれられた光。

それが。


奇声をあげながら、誰かが何かを振り下げる。 重たい塊。それが頭に当たる。

「はあっ、はあっ、はあはあはあっ」


荒い吐息は獣のようで、私はただその姿をみることしか出来なかった。



誰が……?

私が……?


頭がグルグルと回る。フラッシュバックかトラウマか分かりはしないが、酷い夢えんであることには代わりない。

映像が小刻みに替わっていく。知らない映像。忘れてしまった筈の映像。それが一枚の写真のように切り取られて次々と流されていく。


月。
楽しそうな会話。
白い息。
男の子の笑い声。

頭の中で回り出す、メリーゴーランドのきらびやかさ。爛々と輝いた飾り物の馬の上に、男の子が乗った。





(20120220≠助けてと誰も聞こえていない言葉を投げ掛けて)







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