「赤也とー柳生とー仁王とー」
つらつらと並べられる人の名前はこの数日であった人達だった。前の柳君と会った後の時を連想させるこの嫌な感じ。いやいや、まさかまさか。丸井がこんな早いペースで不安定になるわけないよねぇ。そう思いながらも、背中から流れる冷や汗が止まらない。
頬を持ったままぷにぷにと感触を楽しんでいた私の手に丸井君の舌が這う。、舐められたところから生暖かい唾液が私の手の上に乗っかる。かなり艶やかな行為だ。
「なにしてた?」
にっこり。真っ赤な舌と花のような笑顔。でもその目には責めるような色を灯している。ふっと息を飲んでしまった。丸井君がここぞとばかりに目を小さくさせ、私をみる。
「俺には、言えないのかよぃ?」
にこにこ。それでもお日様にように笑っている丸井君。背中が益々冷たくなって、唇がカサカサに乾いていく。
「なぁ、XXX」
ガンガンと頭の中で警鐘が鳴り響く。ねぇ、丸井君。なんで。
頭を抱える。こんな時に頭痛がしてきた。どうなっているか分からないが、かなりヤバイ状況だと言える。
ぼやける視界
虚ろな世界
にこにこと笑う、丸井君。これでここが靴箱だったら過去のフラッシュバックになるだろう。頭が痛い。ガンガンする。
「おれ、おまえのこと、好き」
それは、私のこと?
「な、だから約束、して?」
約束って、なんだった?
「俺のおれのこと好きって約束。誓ってXXX」
……それは、誰?
警鐘がなり続ける。目眩に吐き気。体調悪化のオンパレードで、だんだんと目をあけていることさえ辛くなっていく。駄目だ。丸井君を見れない。私は、丸井君を見ていなくちゃいけないのに。
手を伸ばして、何かを掴もうともがく。藁にもすがる思いとはこのことだろうか。
意識が飛ぶ瞬間。丸井君が笑ったような気がした。
警鐘は止まない。
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