まあと曖昧に笑いながら、柳生君は続きを喋る


「あれから、切原君が幸村君にテニスの試合を挑むことは実質なくなってしまいましたから」
「え、なんで?部内で試合とかはするでしょう?」
「………幸村君にもいろいろ考えることがあるのでしょう。切原君との試合は意図的に組まれていませんから」
「ふへー、相変わらず幸村君の思考回路は意味が分からないよ」
「怒りますよ」
「君達身内に甘過ぎるよ、これぐらい悪口に入らないでしょう普通」
「普通なんてこの学校には関係ありません」


そりゃそうだ。納得する。唇をくちゃりと押し曲げて笑う。
ページの捲る音が続けて聞こえた


「え、で、トラウマに?」
「まあ、それもあるかなと」
「まだあるの?」
「一番は準優勝のことでしょうが、でもまあ一杯あるんですよ、切原君には」
「とかいってそんなに一杯ないのがオチなんだよねぇ。というか、いい加減過ぎだよ、柳生君。……あ、そういえば切原君に気持ちがいい声ですねとか言われたんだけど……って、大丈夫?」


柳生君は、本をいきなり閉じて、座っていた椅子の背に手をついて頭を抱え始めた。
ため息吐きはじめたりして、話し掛けて欲しそうだ。話し掛けたらいやな話しを聞きけそうだが。


「………」
「すいません」
「いやいきなり謝られても」
「生存本能、まあそういう単語は科学的には存在しないのですが、しかしながらそういう存在が存在していると仮定する場合、切原君という存在はその生存本能の塊であると、私は思います、勿論彼にも起伏がある為いつも同じだと言い難く、いつもそういう」
「ちょっと待って、何の話をしているのか確認していいかな?」



矢継ぎ早に口から繰り出されるパンチをかわしながら、やっと柳生君に話しかけられた。
いきなり謝られたこともだが、生存本能とかなんとか話しについていけない。


「……私はこういった話し、苦手なんですよ」
「だから何の話?」
「その……だから!…情事の話し…です」


ピクピクと頬が動いた。なんの悪い冗談だ、確かに生存本能っていうのはそういう話でも、確かにあるけれどさぁ。
なんでそういう、いや、思春期だから普通なんだけど。だけどそうだと思ったら彼、いやいやいや


「正確には生存本能というよりは種族保存本能というべきなのですが、その彼は、そういった……えっと…まあえっちなことをするのが好きなんです」
「えっちなという言い方が凄く可愛い言い方だったのが癪に触るけど、へーえ、じゃあ彼本当に口説いていたわけだねぇ」

今、柳生君の顔を覗きこめば顔が赤かったりするのだろうか
覗いてみたいようなみたくもないような


「……あなたはなにもされていないようですが、切原君は色情魔ですから」
「……色情魔」
「彼が壊れたときにより一番強調されたことは色欲だったのでしょう。暇さえあれば女子とそういうことをやっているんですよ。一概には言えませんが、私が思うにあれは支配力をただ表したいだけだと思いますが」


あはは
成る程、腰まわりに抱き着いてきたのはそういう邪な感情があったわけだ

成る程成る程、納得した


「私、切原君を見る目が変わるよ、絶対」
「あなたまで邪な視点で見ないで下さいよ」
「見ないよ、たぶん。というか切原君とまた会えるかどうか」
「会えますよ。切原君、あなたのことその話をきく限り気に入っている様子ですから」
「あれ、相手選ばずじゃないの?」
「そんなわけないじゃないですか」
「どこを気に入られたんだろう、私」
「話しかけて、相手しちゃったからじゃないですか」
「切原君、相手選ばすじゃないけど、選別の仕方が雑いんだね、よく分かった」


普通の人だったらなんなくクリアな問題だよ、それ
あーもう、なんだかなぁ






  
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